Column

#35 Farmers Are Artists!? The Real Voice of Young Satsuma Mandarin Farmers

◆紀南アートウィーク対談企画 #35

〈今回のゲスト〉

松下農園
松下真之さん
高校卒業後、大阪・和歌山の地元スーパー「松源」に入社し、日常の業務を行いながら社会人野球のチームで活躍。そのあと、和歌山県田辺市の上芳養にある実家、松下農園で家業を手伝っている。農園の経営をされている父親と二人三脚で、みかんや梅の畑作業を勤しんでいる若手農家。

〈聞き手〉

藪本 雄登
紀南アートウィーク実行委員長

〈参加者〉
杉 眞里子
紀南アートウィーク副実行委員長

農家はアーティスト!?若手ミカン農家のリアルな本音~

目次

1.松下さんのご紹介
2.みかん農家は割に合わない!?
3.若手農家のモチベーションを上げるには?
4.農家への行政支援
5.農作業をしているお年寄りが幸せそうなのはなぜ!?
6.みかんを100万円で売るためには
7.これからの若手農家さんにエールを!

1.松下さんのご紹介

藪本:
お久しぶりです。中学校時代、私と同じ野球のボーイズリーグのキャプテンで、同級生の松下さんです。以前対談しました、キャラバンサライの更井さん(*)と同じ上芳養(かみはや)地区の松下農園の跡取り息子です。それでは早速ですが、お話を聞かせてください。

*対談企画 #13 『紀南における食とアート』 フレンチレストラン「キャラバンサライ」オーナーシェフ更井亮介さん

 紀南アートウィーク

松下さん:
はい。何でも聞いてください。

藪本:
更井さんも野球部の後輩でしたが、私たちは野球ばっかりやっていましたね。

松下さん:
私は高校卒業して松源(*)に就職しても、野球をやっていましたよ。

藪本:
社会人野球で松源に就職したんでしたよね。

松下さん:
そうです。今はマツゲン箕島硬式野球部(*)という名前になっていますね。

*松源・・・大阪・和歌山で展開するスーパーマーケット
*マツゲン箕島硬式野球部 http://w-minoshima.or.jp/yakyuu.html

藪本:
南部高校時代(*)は野球部の4番セカンド、キャプテンでしたね。

*南部高校・・・春の甲子園に4回、夏の甲子園に2回出場している和歌山県の野球強豪校
https://www.minabe-h.wakayama-c.ed.jp/

杉:
カッコいい!

藪本:
松源では野球しながら仕事もしていたのですか。

松下さん:
正社員でしたからね。週休2日で仕事をして、休みの日を全部野球にあてていました。実質休みはありませんでしたね。やるからにはプロも目指していたんですよ。でもプロの壁は厚かったです(笑)。プロ野球のスカウトから「あいつええやん」くらいは言われたことがありますよ。

杉:
すごいですね!

松下さん:
今も草野球はやってますよ。

藪本:
そのあと上芳養に戻ってきたんですね。イケメンのお父さんに似てきましたね。

松下さん:
父のことを覚えているんですか。

藪本:
覚えてますよ。よく日に焼けて真っ黒でしたね(笑)。毎年みかんを送っていただいていました。あの当時うちの家のみかんは、松下農園のみかんでした。それ以外はうちにはなかったですよ。

松下さん:
いいみかんを送ってましたよ(笑)。藪本さんには変なみかんを食べさせられないですよ(笑)!

2.みかん農家は割に合わない!?

松下農園のみかん畑

藪本:
松下農園はファミリービジネスなんですね。株式会社でも農業法人でもないのですか。

松下さん:
個人事業主です。みかんは個人売りして、梅はほぼJAに出荷しています。

藪本:
みかんの価格はどうやって決めているのでしょうか。

松下さん:
昔はひと箱4000円くらいで販売していました。他よりは安かったのではないでしょうか。でも、味は負けないですよ。それでも最近は値段を上げていっていますよ。割に合わないですからね。

藪本:
みなさん、それを言われますね。「割に合わない」って。みかんひと箱1万円で売りませんか。

松下さん:
売れるわけないですよ(笑)。有田みかんでもそんな値段で売ってないですよ。

藪本:
やっぱり有田みかんはすごいのでしょうか。

松下さん:
だれでも知ってるブランドですから。ネームバリューが大きいですよ。

藪本:
「松下みかん」としてブランド化して売っていきませんか。

松下さん:
うちなんか風前の灯ですよ(笑)。みかんは消えかかってます。

藪本:
えっ!?どういうことでしょうか。みかんの木の寿命ですか。

松下さん:
寿命もありますが、父が「みかんで金儲けるのは大変や」と言ってあまり力を入れてなかったんです。

みかんは水分不足のストレスを与えて育てます。木の下にシートを敷いて、雨水などをあまり吸わせないようにして、みかんの味をよくするんです。

ただストレスをかけている分、収穫が終わったら、ちゃんとケアをしてあげないといけないんですが、うちはそれを怠っているので……。

藪本:
木を休ませないといけない、ということでしょうか?

松下さん:
そうです。人間でも運動した後は補給しないといけないように、木も補給してあげないといけないんです。やった方がいいのは分かってるんですけど、うちは与えないですね(笑)。そんなことを続けていたらどう考えても木がへたってきますよ。それが何年も続いてしまうと、だんだん収穫量も減ってしまいます。そもそも木も古いですし。

藪本:
なるほど。持続可能性がなくなりつつあるということですね。

松下さん:

そのうちみかんの木はなくなってしまうのでは、と思っています。

藪本:
でも、どうしてそんな状態にある家業を継いだのでしょうか。

松下さん:
長男だからです。宿命ですよ(笑)。「長男やから帰らなあかんな」っていうのはずっと思っていましたね。

藪本:
ただ、生活していかないといけないですよね。今後の農園の計画はどのようなものなのでしょうか。

松下さん:
今の農園は7割が梅です。みかんの木がだめになったら、次は梅を植える予定です。

藪本:
でも、みかんのほうが利幅が取れるんじゃないですか。

松下さん:
そうなんですけどね。おいしいみかんを作るのは手間がかかるんですよ。

藪本:
梅は食感くらいしか差が出ないって言いますね。

松下さん:
梅は結局加工しだいですからね。きれいな大玉の梅より、ちょっと破れた梅のほうが流通が多かったりするようです。

藪本:
つぶれ梅のことでしょうか。

松下さん:
そうです。

藪本:
ところで、松下農園の山はもともと誰の土地だったんでしょうか。

松下さん:
たしか祖父が養子になって土地をもらい、借金しながら畑を増やしていったようです。父の代では畑の面積を増やしていないのですが、親戚の畑は借りていますね。ある程度面積がないと収益が上がらないので。でも、広すぎても人の手が足りなくて回らないです。やっぱり割に合わないです。

藪本:
どういうことでしょうか。

松下さん:
労力に対して収入が割に合わないと感じます。

藪本:
労力というと、普段はどのような作業がありますか。

松下さん:
梅の収穫期は5月後半から7月初旬くらいまでで、それ以外は木に肥えをやったり、草を刈ったり、消毒したりしています。作業はやろうと思えばいくらでもあります。

藪本:
従業員はいないのですよね。

松下さん:
そうです。従業員を雇ったら私の給料がなくなります(笑)。結婚した当時は、昼間は家で畑の仕事をして、夜はパチンコの仕事に行ってましたよ(笑)。

畑で働く日数をちょっと減らして、その分、外に働きに行きたかったのですが、畑の作業があったので、そんな時間はありませんでした。

藪本:
ちなみに、上芳養地域ってどういう場所なのですか。上芳養は梅農家、ミカン農家というイメージなのですが。

松下さん:
上芳養は何もないですよ。ほとんどみんな外に出ていきますよ。

参照:Googleマップ 赤いピンが刺さっているところが上芳養地区

3.若手農家のモチベーションを上げるには?

出典:写真AC

藪本:
上芳養の閉塞感みたいなものから脱却するには、何が必要だと思いますか。

松下さん:
何が必要なんでしょうか(笑)。私が教えてもらいたいです。

藪本:
そうですね~。例えば、上芳養に活躍している農家さんっていますか。

松下さん:
それはいますよ。

「チームひなた」(*)って知ってますか。上芳養の日向という地区の人たちが立ち上げた日向屋っていう会社があるんです。畑を荒らしに来るいのししを狩猟したり、クラウドファンディング(*)で地域づくりとかをしています。そこはみかんにも力を入れているようですよ。

*チームひなた・・・大切に育てた農作物が動物によって食い荒らされてしまう。この課題を乗り越えるために若手農家が集まったところから始まったチーム。
https://team-hinata.com/

*クラウドファンディング・・・「和歌山県日向地区の農業3大問題を解決!持続可能な魅力ある農業を目指す!」参照:地域に寄り添うクラウドファンディングFAAVO
https://camp-fire.jp/projects/view/289878

藪本:
そういう方もいらっしゃるんですね。

でも、今までいろんな方から話を聞いてきましたが、紀南のブランド力はすごいというお話しだったんですけどね(笑)。

松下さん:
えー!?それは何のブランドですか。

藪本:
南高梅とか、果樹王国和歌山の恩恵を受けているという話でした。日本国内では優遇されている地域なのではないでしょうか。

松下さん:
確かに、梅のブランドはすごいですね。

藪本:
だからみかんをやめて梅を作る人が増えているのかな。出荷先も十分にあるし。

松下さん:
消費も多いですからね。うちでは梅をつけて加工する工程はしないので、その日落ちてる梅を拾ってそのまま農協に出荷するだけです。でも、梅農家もギャンブルだと思いますよ。豊作だったら値段が下がりますしね。普通の量が一番(笑)。

藪本:
凶作だったら値段上がるし?

松下さん:
そうですね。結局自然が相手ですからね。ひょう被害にあった年は傷物の梅が増えます。安定はしないですよ。

藪本:
それも含めて割に合わない?

松下さん:
そうですね。子どもに継がせたいとか全く思わないですね~。「やめとけ」って言います(笑)。

藪本:
松下さんのモチベーションは上がってこないですか。

松下さん:
上がってこないですね(笑)。どうやったら上がってくるんでしょうか。

藪本:
そうですね。ちなみに、儲かったらやる気になりますか?(笑)。

松下さん:
どうでしょうか。やっぱり楽しくないとダメですね。今は楽しいと思えないです。

藪本:
単純労働がダメなんでしょうか。

松下さん:
外でする仕事ってなんでもしんどいでしょう。その辛い仕事に対する楽しみを見出せないです。草刈りも、肥えをやるのとかも、何するにしても、まあしんどいですからね。

逆に聞きたいのですが、今まで話を聞いてきた方って何がモチベーションになってましたか。

藪本:
いいものをどう作っていくかっていうことですね。クラフトマンに近い感じでしょうか。アーティストのようにみかんの木を育てている、ということに価値を見出しているのだと思います

松下さん:
ミカンは作り手によって味が変わりますからね。

藪本:
おいしいみかんは作り手の名前がつきますよね。〇〇みかんみたいな。

私はみかんの企画展をしたいと思っています。みかん自体を芸術作品の1つにして、一個100万円で売るにはどうしたらいいのかっていうことばかり考えてます。

「柑橘類の文明」(*)という本に影響されているのですが、人類学的な視点でみかんを再定義してみたいと思っています。これは色々と議論がおきましたが、現代アートの世界ではバナナ1本1,000万円以上で売れた事例があるんですよ!

松下さん:
なんですか、それは!

*柑橘類と文明・・・数々の受賞に輝くサンデータイムス・ベストセラー

ヨーロッパ文化に豊かな残響を届け続ける柑橘類の文明史をイタリアの明るい陽光のもとで香り高く描く。出典:紀伊國屋書店
https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784806714934

アート・バーゼル・マイアミ・ビーチ(ABMB)でマウリツィオ・カテランが発表(中略)

1本のバナナを灰色のスコッチテープで壁に貼り付けた本作は、3つのエディションが12万ドル(約1300万円)〜15万ドル(約1600万円)の価格で売却。また、フェアの閉幕を目前に、ニューヨークを拠点に活動するアーティスト、デビッド・ダトゥナがそのバナナを壁から剥がし、ブース内で食べるという“事件”が発生し、大きな注目を集めた。

参照:美術手帖
https://bijutsutecho.com/magazine/news/headline/22794

藪本:
それしか地域を発展させる方法が思いつかないのですよ。みかんや梅という日本最強の商品が紀南にあるわけですからね。

一個100万円でもほしいと思わせたい、と考えているわけです。

山本鼎(かなえ)(*)という人が立ち上げた農業芸術論のような考えでは、「農家こそアーティスト」だそうです。宮沢賢治(*)もそういうことを言っています。その文脈をとらえると、農業を芸術史の観点から、再度見直すことができる可能性があるのではと考えています。

*山本鼎・・・創作版画家、洋画家、そして、美術教育運動家として日本の近代美術史上に足跡を残した芸術家

参考:上田市交流文化センター サントミューゼ
https://www.santomyuze.com/museum/collection/yamamotokanae/

*宮沢賢治・・・童話作家、教師、科学者、宗教家など多彩な顔を持つ一方、1926年(大正15年)には農民の生活向上を目指して農業指導を実践した

参考:花巻市 ホームページ

「農民芸術概論」より

おれたちはみな農民である ずゐぶん忙しくて仕事もつらい

もっと明るく生き生きと生活をする道を見付けたい(中略)

世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない

出典:KEIBUNSHA ホームページ
http://www.keibunsha-books.com/shopdetail/000000025547/

多くの農家さんは、東京に売ることばかり考えています。マーケティングとはこうだ、みたいな話はつまらないです。みんな言うことは一緒ですからね。

私達のプロジェクトでは、日本では全く知られていない無名の農家さんとご一緒させて頂くほうが、実現の可能性があると思っています。

日本では流通していないぐらいの、本当に小さなロットでいいんです。日本人でも知る人の少ない和歌山の「上芳養」という山の中のとある地域で、個人の農園が売っているみかんを、外国人が100万円で買っていきましたっていう、そんな世界観がいいなって思っています。

松下さん:
すごいですね~。そんなこと誰も考えないですよ。

藪本:
現代アートに興味を持ったのは、カンボジアの現代アーティストの作品がきっかけです。ごく普通の地元の事象を、掘り下げて、掘り下げて、掘り下げて、現代の事象と関連させた映像作品が、数百万、数千万円で売買されているんです。

私は、アーティストと農家は近い存在ではないかと思っています。農家さんがその機能を担っている、というのを実現したいです。

この紀南アートウィークで、そういうプレーヤーがうまれるきっかけになればいいなと思っています。現代アーティストの作品が、そのような価値になる理由をみんなで考えたいのです。

松下さん:
すごいね。そんな思考は今まで持ったことないですよ。

藪本:
これしか方法はないと確信をしています。100万円はいいすぎましたが、地道に着実に価値を高めていく活動をやっていく必要があると思います

4.農家への行政支援

藪本:
農家さんへの行政の支援はどういうのがあるのでしょうか。

松下さん:
いろいろな補助金があります。梅でもみかんでもそうですが、植え替える時には補助金が出ます。農機具や設備投資関係にお金を使う時にも補助金が出ますね。

藪本:
その補助金がないとやっていけないでしょうか?

松下さん:
無理ですね。

藪本:
じゃあ、そもそもビジネスとしては、成り立ってないっていない、ということになるのでは。

松下さん:
そういうことかもしれませんね。

農家には力がないし、貯えもありません。会社法人としてやっているところはわかりませんが、個人農家でそんなに資産持ってる人は少ないと思いますよ。

補助がないと何もできない、補助金があるから設備投資しようと思えます。

藪本:
経済政策というより社会福祉政策といった感じですね。セーフティーネットみたいな。

競争原理が持ち込まれるのはどうでしょうか。資金を持って来て投資して、効率的な農業をする人たちが来たらどうなると思いますか。

松下さん:
効率的な農業といっても、しょせんは山なんですよ。山の作業効率は悪いんです。天候でも変わります。台風もあります。だから大きい会社が来て土地を買っても、そんなにたいしたことはできないと思います。

参考:農林水産省 農業経営に使える税制・融資・補助金についてhttps://www.maff.go.jp/j/kobetu_ninaite/n_pamph/attach/pdf/zeisei_hojyo-47.pdf

5.農作業をしているお年寄りが幸せそうなのはなぜ!?

出典:写真AC

藪本:
みかん作りにこだわるとはどういうことなんでしょうか。

松下さん:
プライドを持っていいものを作る、ということなのではないでしょうか。

「明日ちょっと雨やから、あの木とあの木のとこに水が入るようにしとこうか」っていう、細かいことまでされていますよね。そんなことまでするの!?と思いますね。

剪定の作業にしても、これは残す、これは切る、とかそういう細かい作業はすごいです。うちの父は「剪定めんどくさい」って言ってやらないので、私がやっています(笑)。

藪本:
自然農法なのでしょうか(笑)。松下さんは就農して9年目くらいですよね。息子である松下さんはどうしたいですか?

松下さん:
自分がこれからどんな農業をしていきたいか、っていうのはまだわからないです。迷走中です。作業はもう覚えたし、ある程度はできるんですけど、「どの肥えをやる」とか、「どの薬で消毒する」とか、ある程度決まっていても、やっぱりわからないです。難しい。

藪本:
今33歳だから、あと4、50年は農業をしないといけないでしょうね。

松下さん:
いやだな~。考えたくないです(笑)。農作業をしているお年寄りの方ってたくさんおられますが、なんか幸せそうですよね。

藪本:
そうですよね。私もそう思います。

松下さん:
お年寄りの方たちって、用事がなくても毎日必ず畑に行きますよね。見てたら楽しそうにしてます。できたら畑なんか行きたくないわぁ(笑)。

藪本:
畑があったら幸せな感じがしますよ?大手企業のサラリーマンより、畑のお年寄りのほうが幸せそう。

松下さん:
皆さん、充実していると思いますよ。あの年になって、そう思えていたらいいけど、そこまでまだ長いなあ(笑)。

野球をやっていたときは「プロ野球選手になりたい」っていう明確な目標があったから頑張って努力できたけど、今は何に頑張ってるのか、わからない状態です。

ただ、サラリーマンじゃないから、休みは自由ですよ。体調悪かったら休めばいいですし、どうとでもなります。人に対してそんなに気を使う必要はないので、対人のストレスはないかな。

藪本:
農家さんって、意外と幸せなんじゃないでしょうか。

東京やシンガポールのいわゆる「川下のビジネス」(*)って、タイミングが合えばうまく稼げるんですけど、どこか馬の目を抜く商売なんですよ。

*川下のビジネス・・・ 商品の流通経路を川になぞらえて、「川上から川下へ」と表現します。川上はメーカー、川下は小売業を指し、中間に位置する卸売業は、川中と呼ばれます。
参考:マーケティングがわかる事典 日本リサーチセンター

松下さん:
結局一回しかない人生だから、楽しく過ごしたいですね。

藪本:
私は松下さんに上芳養で、100万円のミカンを売る人になってほしいです。

松下さん:
「あいつミカン1個100万円で売ったらしい」って言われたらカッコいいですね。

藪本:
できますよ!品質がいいことは大前提ですが、「なんでみかんを育てるの?食べるの?」みたいことをゆっくり考えていきましょうよ。

杉:
なんだか、松下さんのお話は、今まで聞いてきた他の方のお話よりもすごく実感がわきますね。本音を言ってもらってる気がします。

私は東京に住んでいますが、さっき藪本さんが言われたような「馬の目を抜く」ここの生活がむなしく感じる時がありますよ。

自分の手の届くところで、循環した生活を送れていない感覚があります。社会と自分の循環、自然と自分の循環、それを感じることができなくて、心の平穏を保てない感じです。

農家さんって、用事がなくても畑に行って虫を取ったり、草を刈ったりしますよね。そういう自然と共存してきた生活を過ごしてきたから、今、年をとっても幸せなのかもしれない。農家さんの過ごされている営みがすごく人間らしいように感じます。

誰にとっても人生というのは、たんたんと同じことを繰り返していく修行のようなものだと思うんです。あとはそこをどう楽しむか、ということではないでしょうか。役割というか、自分の生きがいを見出して、人生を楽しめればいいですね。

そして1%でもいいから何か稼げるものがあって、派手でなくとも毎日の生活を大事にして過ごしていけたら、と思います。

6.みかんを100万円で売るためには

藪本:
みかんを1個100万円で売るために、上芳養の歴史を勉強しないといけないですね。この土地はこんな歴史のある土地なんですっていうことをストーリーに入れれば、100万円のみかんが売れると思うんですよね。縄文時代の上芳養はどんな土地だったんだろう、っていうのに興味があります。

松下さん:
そんなの誰もわからないでしょう~(笑)。

藪本:
そこは私が文献を調べて探ります。松下さんは、いいみかん作ってくださいよ。私の計画では10カ年計画なので、よろしくお願いします。(笑)。

ところで、松下農園のみかんは宣伝しなくても売れているのですか。

松下さん:
リピートのお客さんばかりですけど、初めてのお客様からの注文もありますよ。今は200箱くらい送っています。

藪本:
思うんですけど、段ボールに入れなくても、黄色いコンテナのままでいいんじゃないですか。あのコンテナ、いい感じですよね。直送って感じでカッコよく見えますよ。コンテナ1箱、1万円で売ってみませんか(笑)。

松下さん:
うちのみかん、味には自信ありますよ~。

現地の人じゃないと、新鮮なミカンって食べたことないんでしょうね。スーパーのみかんとは全然違うと思いますよ。

藪本:
畑で食べるミカンは本当においしいですよね。

杉:
それを言うと、東京の人たちは本物のミカンを食べてないですね(笑)。

松下さん:
そうかもしれないですね。品質がいくらよくても、時間がたてばやっぱり味が落ちますからね。

藪本:
返礼品は現地に食べに行くことにしたらいいんですよ。

杉:
本当にそうですね。

レタス農家さんも、レタスは1時間ごとに鮮度が落ちるって言われていました。その話を聞いて、レタスを食べに白浜に行かないと、と思いましたよ(笑)。

松下さん:
取り立ては絶対おいしいですよ。

7.これからの若手農家さんにエールを!

出典:写真AC

藪本:
最後の質問ですが、ミカンを作るってどういうことですか。

松下さん:
藪本さん、また難しいことを聞きますね~。

藪本:
じゃあ、質問を変えます(笑)。どうして人はみかんを食べるのでしょうか。

松下さん:
おいしいからでしょう。あとは冬はみかんっていうイメージもありますよね。

藪本:
こたつとか、鏡餅とか?昔の日本の原形のイメージでしょうか。

松下さん:
ずっと昔からそういうイメージですよね。

うちの農園はもともと全部みかんでした。祖父がみかんを植えたので、一番古いもので60年くらいたってますね。

藪本:
南部の土地は、痩せてるから梅しか作れなかったと聞きました。そうやって南部は梅が発展したそうですよ。

松下さん:
この辺りもそうですが、潮風があたるので塩害がひどいんです。台風も大きいのがよく来るので、木もよく痛みます。どうして祖父がみかんを植えることにしたのかはわかりませんが、暖かいし、寒暖差もあるし、土地に合ってたんでしょうね。

藪本:
恵まれた土地だったのでしょうね。

ところで松下農園の権限はいつ松下さんに移譲されるんでしょうか。

松下さん:
わかりません(笑)。でも、まだ「自分でやれ」って言われてもできないですね。

藪本:
なるほど。お父さんはまだ引退できないんですね。その課題は何なんでしょうか。

松下さん:
ズバリ、モチベーションと経験不足!(笑)。

藪本:
お父さんには目に見えないものが見えてるんでしょうかね。

松下さん:
そうですね。細かいとこはめちゃくちゃ細かいです。常に、ふりまわされています(笑)。でも足元にも及びません。それは認めざるを得ないです。自分の判断で仕事をまわしてみろって、言われてもできないですね。

藪本:
どういうところができないのですか。

松下さん:
冬があけたら違う肥えを4回やるんです。でもどこのタイミングで、どの肥えをするのかわからない。その合間に消毒もしないといけないんですが、そのタイミングもわかりません。偉そうに言われると腹が立ちますけどね(笑)。

藪本:
今までと違ってリアルな話が聞けました(笑)。

松下さん:
今まで藪本さんがお話を聞かれてきた意識が高い人たちのことも、嫉妬するほど憧れますよ。自分も昔は一生懸命頑張ってきたことがあるからね。うらやましいな、と思ったりします。

でも、今回藪本さんとお話をするいい機会をもらえたから、自分の意識も変わっていけたらいいなって思います!

藪本:
やれるよ。大丈夫!頑張って!

対談企画 #1『みかんはアートか?』
対談 #3 『みかんを育てるということ – みかんと美意識 – 』