「留まるという抗い」会場紹介

SOUZOU/旧岩橋邸では、現在急速な発展を遂げるメコン経済圏のアーティストたちの作品を展示します。タイキ・サクピシットは、幻想的でありながらも不穏さが漂う映像表現で現代タイの緊張感を、チュオン・コン・トゥンは、ただ美しくノスタルジックではない混沌とした現実的な夢を、それぞれ映像作品で表現しています。カニータ・ティスは、カンボジアでは日常的に見ることができる鋼線を用いて、直感的な手の動きから作品のかたちを生み出しています。彼らのまなざしは、かつての日本の高度経済成長期に誰もが目を向けたような輝かしい未来にむかうのではなく、今目の前にある失われていく自然や変わる都市空間について詩的に表現しています。中辺路に拠点とするあわ屋は、SOUZOUの家と庭の「あわい」において、熊野の幽玄な世界観を捉えた”音のアート”を創出する。

出展作家:あわ屋(日本)、タイキ・サクピシット(バンコク)、カニータ・ティス(プノンペン)、チュオン・コン・トゥン(ホーチミン)

【展示会場】

SOUZOU

南方熊楠顕彰館からもほど近い場所に位置するアーティストの杵村直子と杵村史朗が運営する古民家カフェ「SOUZOU」。旧岩橋邸を徐々に修繕、整備しながら、地域の人たちの和みの場でもあり、人々の想像力を引き出す場として、日々変化していっています。


住 所:〒646-0035 和歌山県田辺市中屋敷町 70-1
展示時間:10:00- 17:00
休館日:なし
問い合わせ:info@kinan-art.jp

【出展作家のご紹介】

あわ屋(AWAYA)
福島正知と奥野裕美子によるサウンドアートユニット。2007年より熊野の地中辺路へ移住し、その自然に寄り添う暮らしの中で日々耳にする音をインスピレーションの源に、日常に潜む宇宙の神秘や生命の不思議を独特の音世界で表現した”音のアート作品”を制作し、ジャンルを超えた活動を展開している。2010年より毎回参加している国際芸術祭BIWAKOビエンナーレでは、サウンドインスタレーション展示とアーティスティックなコンサートの両方で独自の世界観を発信し続けている。前田耕平《Breathing》(2021年、紀南アートウィーク )に楽曲提供。2022年3月には、テイチクエンタテインメントよりACOON HIBINOとの共作アルバム『WATER FOREST KUMANO』リリースした。「BIWAKOビエンナーレ2022 起源~ORIGIN~」(2022年)参加。

タイキ・サクピシット/ Taiki Sakpisit
バンコクを拠点に活動。ストーリーテリングへの革新的なアプローチと、タイの複雑な歴史に対する深い探求で知られている。映画というレンズを通して、タイの激動の過去を解き明かし、彼の実験的な作品に、繊細でありながら鮮烈な政治的コミットメントを吹き込んでいる。サクピシットの作品は、現代タイの根底にある緊張、葛藤、予感を掘り下げ、緻密で感覚的に圧倒的なオーディオビジュアル・アッサンブラージュによって丹念に作り上げられ、多様なサウンドとイメージを駆使して、従来の物語に挑戦し、思考を刺激する没入型の体験を作り出す。長編映画『The Edge of Daybreak』は、ロッテルダム国際映画祭で国際批評家連盟賞を受賞。近年の作品は、バンコク・アート・ビエンナーレ(2024年、タイ)、第14回メルコスール・ビエンナーレ(2024年、ブラジル)などで展示されている。 

カニータ・ティス / Kanitha Tith
カニタは1987年カンボジアのプノンペン生まれで、直感的なプロセスを中心に、彫刻とドローイングを中心にメディアを横断して活動している。彼女の個展には、カスコ・アート・インスティテュート(ユトレヒト)でのパフォーマンス「How Heavy Is Time」(2020年)、展覧会「Instinct」(サ・サ・バサック、プノンペン)(2018年)などがある。主なグループ展に、「第58回カーネギー・インターナショナル」(2022年、ピッツバーグ、アメリカ)、シンガポール・ビエンナーレ(2022年、シンガポール)、「サンシャワー:東南アジアの現代美術展 1980年代から現在まで」(森美術館・国立新美術館、東京、2017年)、「Rescue Archaeology」(2013年、ifa、ベルリン・シュトゥットガルト、ドイツ)などがある。カニタはオランダ国立芸術アカデミー(アムステルダム)のレジデントを務めた(2019-2021年)。カンボジアの映画集団Anti-Archiveのメンバー。

チュオン・コン・トゥン(Truong Cong Tung)
1986年生まれ。ベトナム中部高原の少数民族が暮らすダクラクで育つ。2010年にホーチミン美術大学を卒業し、漆絵を専攻。科学、宇宙論、哲学、環境の研究に関心を持ち、ビデオ、インスタレーション、絵画、ファウンド・オブジェなど、さまざまなメディアを駆使して、土地の変容する生態系、信仰、神話に具現化された近代化の文化的、地政学的な変化に対する個人的な思索を反映させた作品を制作している。また、ビジュアル・アートと社会科学/生命科学を結びつけ、さまざまな公共的文脈や場所での芸術的・文化的活動を通して、オルタナティブな非正規の知識を生み出す集団、Art Labor(2012年設立)のメンバーでもある。