「粘菌:うごく、とどまる」会場紹介

和歌山県が生んだ日本を代表する知の巨人、南方熊楠。その熊楠が残した蔵書・資料を恒久的に保存し、熊楠に関する研究する顕彰館では、熊楠が生涯を通じて研究した粘菌の世界に共鳴する作品を展示します。ヘアート・ムルの自然物らしきものがゆっくりと変化し続ける映像作品は、(作家本人は意図していないにも関わらず)まるで粘菌の動きを想起させるようにもみえます。2022年から紀南アートウィークでも作品を発表し、〈コモンズ農園〉プロジェクトを行っている廣瀬は、これまでの田辺での滞在から熊楠の思想「萃点(すいてん)」に触発されて制作した作品を展示します。山田汐音(秋田公立美術大学粘菌研究クラブ)は、粘菌の動きを人間の体を用いてトレースした映像作品を展示します。

出展作家:ヘアート・ムル(ロッテルダム)、廣瀬 智央(ミラノ)、山田 汐音(岩手)

【展示会場】

南方熊楠顕彰館

博物学、民俗学分野における先駆的存在であり、日本を代表する植物学者である南方熊楠。彼の偉業を顕彰するため、最晩年の 25 年間を過ごした邸宅に隣接して 2006 年に開館しました。遺された貴重な蔵書や資料を恒久的に保存・ 活用しつつ、熊楠に関する研究推進を図る中心的な存在として知られています。


住 所 :〒646-0035 和歌山県田辺市中屋敷町36番地
展示時間:10:00- 17:00

休館日 :毎週月曜日 (23日、24日)

     ※24日(火)は振替休日になっているため、ご注意ください。

問い合わせ: info@kinan-art.jp

【出展作家のご紹介】

ヘアート・ムル(Geert Mul)
1965年生まれ、オランダ・ロッテルダム在住。ヘアートは、デジタルアートのパイオニアとして、25年以上に渡り、自然とテクノロジーを巡る探求を行ってきた。版画、映像、映像技術を活用したインスタレーションなど、幅広いメディアで実験的な作品を発表している。インスタレーションを通じた自然、人間、テクノロジーと知覚の相互関係は、ヘアートの作品の重要な主題である。ヘアートの作品は、公共空間、美術館、フェスティバルなど、様々な場所で展示されている。クレラー・ミュラー美術館(オランダ)、ボイマンス・ヴァン・ベーニンゲン美術館(オランダ)、アムステルダム市立美術館(オランダ)、京都国立近代美術館(日本)、ソフィア王妃芸術センター(スペイン)、バレンシア現代芸術院(スペイン)、カルティエ現代美術財団(フランス)、シカゴ現代美術館(アメリカ)などで展示されている。

廣瀬 智央(HIROSE Satoshi)
1963年東京生まれ、ミラノ在住。イタリアを拠点に、日本、アジア、ヨーロッパなど世界各地の多数の展覧会に参加している。境界を越えて異質な文化や事物を結びつける脱領域的な想像力が創造の原理となり、目に見えない概念を目に見えるものへと転換する試みが、廣瀬の作品には一貫している。日常の体験や事物をもとに、新しい価値の創出や世界の知覚を刷新する表現をつくりだしている。19年間継続する母子生活支援施設の母子たちとの長期プロジェクトや、展覧会で使用した素材を地域の人々と協働し、循環させるアートプロジェクトにも近年取り組んでいる。

山田 汐音(YAMADA Shione)
秋田公立美術大学ものづくりデザイン専攻卒業。秋田公立美術大学と秋田市大森山動物園が主催する大森山アートプロジェクト2020で映像作品《粘菌研究》を制作。はじまりの美術館「日常をととのえる」展に粘菌研究クラブとして参加し、インスタレーション作品《ミヂカホコリをととのえる》を制作。現在は岩手県で大野木工の職人見習いをしている。