「変わり続けるかたち」会場紹介

変わらないと思い込んでいるほとんどの事象も、人間の時間軸や観念から引き離すことで変化の中にあることに気づかされます。コン・ダラーの作品に現れる有機的な形態は、生における変化や成長をイメージさせつつも、同時に既存の枠組みにとどまらない未分化な状態、または第三の選択肢を示すような状態とも見て取れます。黒木由美は田辺市の柑橘農家などに協力を仰ぎ、ミカンの木や廃棄物を灰にして釉薬を作り、陶の作品を作り出します。この地域で育ち現在も田辺を拠点に活動を続ける杵村直子は、粘菌の増殖性に着想を得て、制作期間中に出会った人々によって描かれた菌類を作品に組み込んだ新作を発表するほか、杵村が日々描き続けている作品群などを展示します。

出展作家:コン・ダラー(プノンペン)、黒木 由美(仙台)、杵村 直子(田辺市)

【展示会場】

Breakfast gallery

田辺在住のアーティスト・杵村直子が運営するもじけハウス内にある私設ギャラリー。地域のアーティストたちの展覧会や子供たちの絵画教室等が行われている。南方熊楠顕彰館から徒歩3分。

住 所 :〒646-0035 和歌山県田辺市中屋敷町54-2
展示時間:11:00- 17:00
休館日 :なし
お問い合わせ:info@kinan-art.jp

【出展作家のご紹介】

コン・ダラー(Kong Dara)  
1990年カンボジア・プレイヴェン県生まれ。サ・サ・アート・プロジェクトでアートを学び、ヴィラギャラリーでキュレーターとして働く。2017年から2023年5月までサ・サ・アート・プロジェクトのレジデンス・コーディネーターを務めた。ダラーはドローイング、彫刻、インスタレーションなど、メディアを横断して作品を制作している。紙や粘土にペンや色鉛筆を用いることが多く、個人的な経験、記憶、感情を調査し、しばしば社会変化やLGBT+コミュニティについて考察している。個展「オープン・マインド」(2015年、Strange Fruit、プノンペン)や、カンボジア国内外での多くのグループ展に出展している。カンボジア国内外でのレジデンスにも参加し、チェンマイ大学美術学部にアドバイザーとして3ヶ月間招聘された。

黒木 由美(KUROKI Yumi)
1991年福岡市生まれ。陶芸作家。「生きるだけのいきもの」をテーマとし、窯の中の焼成を生かした釉薬による造形表現を追求している。釉薬と土の両方の特性をもつ古代オリエントのファイアンスの研究により、針金と釉薬を用いた独自の制作技法で作品制作を行っている。美しさや醜さ、増殖や消滅などの相反する意味をもつ泡の質感に惹かれ、泡のように膨らむ釉薬素材と技法、私自身の感情が相互に作用し、形や色となって導き出され、焼成の結果、生きもののような有機的な造形を生み出している。主な展示に、個展「黒木由美#1」(2022年、二本木、福岡)。瀬戸国際セラミック&ガラスアート交流プログラムにレジデンスに参加(2022年、愛知)。

杵村 直子(KINEMURA Naoko)
1975年和歌山県田辺市生まれ。武蔵野美術大学卒業。画家。平面における空間性を探究している。世界各地で風景をその場で描き上げる「絵描ノ旅」シリーズを飛行機機内誌に連載。365日、日常を描きオンラインに公開する「日々絵」シリーズからアナ・チンの著書「マツタケ―不確定な時代を生きる術 」表紙絵に採用(プリンストン大学出版局、みすず書房)。そのほか、海と空をその場で描きあげるシリーズなど、具象と抽象のはざまを描いている。また、子どもたちの創造の可能性を研究し、子どもが生み出すアートピースとの合作も試みる。主な展示と作品に、個展「内側とかたち」(2012年、銀座ギャラリーあづま、東京)、「春を想う」(2024年、銀座ギャラリーあづま、東京)など。田辺聖公会マリア礼拝堂(和歌山県田辺市)の壁画など。