「境界をまたぐ」展示紹介

今年の紀南アートウィークは、まちなかへと広がっていきます。移動とは領域を超え続けること。誰かの土地に侵入し、出ていくことの連続であり、歩くことのできる場所のほとんどは、個人や国などに属します。しかし、例えば普段人が足を踏み入れない森のような場所に立った時、いろいろな属性から解き放たれて、その場所と対峙したような経験はないでしょうか。表現に出会い、感性を開くことは、今いる場所の固定化された意味からも解放してくれるかもしれません。

出展作家:久保 寛子(千葉)、杵村 直子(田辺市)

【展示場所】

闘鶏神社

世界遺産である闘鶏神社は、419年に創建された神社であり、熊野三山の別宮的な存在として、熊野信仰の一翼を担っていた。闘鶏神社という名前は、平家物語の壇ノ浦合戦の紅白の鶏を戦わせる鵜合せの故事に由来している。熊楠の妻・松枝は、闘鶏神社の宮司の娘であり、熊楠との関連が深い。熊楠は、神社の背後にある密林を「クラガリ山」と呼称し、植物や粘菌採集を行ったいわれており、闘鶏神社の鬱蒼とした森々の中には、久保の白いシート素材の複数の彫刻が浮遊し、私たちに何を何をみせるのだろうか。

住所:〒646-0029 和歌山県田辺市東陽1-1

【展示場所】

田辺市街の野外(複数箇所)

田辺市街地では、地域の方々から協力を得て、古民家や現在利用されていない場所に杵村の作品を展開します。田辺市街地を巡りながら、ギャラリーから胞子のように飛び出た作品を発見してみてください。

【出展作家のご紹介】

久保 寛子(KUBO Hiroko)  
1987年広島県生まれ。テキサスクリスチャン大学美術修士課程修了。先史芸術や民族芸術、文化人類学の学説のリサーチをベースに、身の回りの素材を用いて彫刻作品を制作する。近年の主な展覧会に、個展「鉄骨のゴッデス」(2024年 ポーラ ミュージアム アネックス、東京)、「GO FOR KOGEI 物質的想像力と物語の縁起―マテリアル、データ、ファンタジー」(2023年、環水公園、富山)、「浪漫台 三線藝術季」(2023年、台湾)等がある。広島文化新人賞(2022年)、六甲ミーツ・アート公募大賞(2017年)受賞。KAMU KANAZAWA(石川)、おおさか創造千島財団(大阪)、株式会社 IZAK(富山)などに大型作品が収蔵されている。

杵村 直子(KINEMURA Naoko)
1975年和歌山県田辺市生まれ。武蔵野美術大学卒業。画家。平面における空間性を探究している。世界各地で風景をその場で描き上げる「絵描ノ旅」シリーズを飛行機機内誌に連載。365日、日常を描きオンラインに公開する「日々絵」シリーズからアナ・チンの著書「マツタケ―不確定な時代を生きる術 」表紙絵に採用(プリンストン大学出版局、みすず書房)。そのほか、海と空をその場で描きあげるシリーズなど、具象と抽象のはざまを描いている。また、子どもたちの創造の可能性を研究し、子どもが生み出すアートピースとの合作も試みる。主な展示と作品に、個展「内側とかたち」(2012年、銀座ギャラリーあづま、東京)、「春を想う」(2024年、銀座ギャラリーあづま、東京)など。田辺聖公会マリア礼拝堂(和歌山県田辺市)の壁画など。