イベント

ここにあるー記憶と忘却、または表裏

2024年3月15日(金)〜6月2日(日)

真珠ビル

〒649-2201 和歌山県西牟婁郡白浜町堅田1385

この度、紀南アートウィーク実行委員会は、和歌山県南紀白浜駅前の真珠ビル/ノンクロンにおいて、「ここにある―記憶と忘却、または表裏」展を開催します。

この展覧会は、大阪府で2023年に開催された「Study:大阪関西国際芸術祭 Vol.3」のために、プロダクション・ゾミアが企画した展覧会を真珠ビル/ノンクロンに合わせ再構成しました。

本展でプロダクション・ゾミアが紹介するアーティストたちは、過去を探求し、現在へとつながるもう一つの道を示したり、見慣れた物事に複数の視点を与えることで、当たり前だと思っている認識に揺さぶりをかけます。それは現在における正しさや価値を覆すことではなく、個人の感性によって別の世界を作る方法であると考えます。

複雑な世界を生きることは決して容易ではありません。複雑さをありのまま受け入れ、多様な価値観としての個人の思いや眼差しで世界の豊かさを築くことも、私たちの想像力がなせる技でしょう。

白浜は、戦後復興期以後を境に国内での指折りの観光地として繁栄しましたが、また現在もインバウンド需要により新たな賑わいが創出されています。昭和という時代と観光産業が築いた現在の白浜の姿も大きな変化の中にあるのかもしれません。

古い街並みやモノを見て、郷愁や懐かしさを感じることがあります。それらは個人の記憶に基づくほかに、映像や写真、記述や伝承など、これまでに見聞きした知識や情報から喚起され、また時にはデジャブのように未体験の出来事が実体験のような錯覚として受け取ることもあるでしょう。

「勝者が歴史をつくる」という言葉にあるように、今私たちが知ることのできる過去は、時の権力者やマジョリティ、歴史を残す権力・技術を持った誰かによって記された出来事がほとんどです。また、モノの持つ価値や意味も時に変化しますが、それらは常に大きな一つの方向を示してきました。しかし、その背後には無数の残されなかった記憶や物語が存在しています。そして私たちの現在もまた、その無数の過去の一つになっていくでしょう。

今を生きる私たちが何を残し得るのか。過去となる現在にどのように向かい合うことができるのか。アーティストたちが過去や見過ごしてきたものの中から見出した世界は、その手がかりを示唆するのではないでしょうか。

【開催概要】

日 程 : 2024年3月15日(金)~6月2日(日)
時 間: 10:00~20:00 (月曜定休)
会 場 : nongkrong (ノンクロン) / 〒649-2201 和歌山県西牟婁郡白浜町堅田1385-1
入場料 : 入場無料 
主 催 : 紀南アートウィーク実行委員会
キュレーション:プロダクション・ゾミア
協 力:アウラ現代藝術振興財団、Artport株式会社、株式会社アートローグ、Salon Shinju/ノンクロン、一般社団法人 南紀白浜観光協会

キム・ジェミニ (韓国)
《西成工場ラン》2023 年、ミクストメディア(シングルチャンネルビデオ 7分、写真、本)

キム・ジェミニは、近年アジアの国々における植民地以後の産業としての機械工場との貿易についてリサーチを重ね、作品を制作しています。本展では、現在の西成公園がある場所にかつて存在した 大日本紡績株式会社に注目し、当時の街並みやそこで働いていた人々が見ていたであろう景色や息遣いを鑑賞者に想起させます。

常木 理沙(日本)
《フラットな関係》 2023 年、ミクストメディア

常木は、日常の見慣れたモノの持つ役割を引き剥がし、再構築する事で異なるイメージを呼び起こします。それは身体的に物事を計測し、自身がまだ見ぬ風景を探求しているようでもあります。常木の生み出す有機的でありながらも人の手垢やぬくもりのような感情が排されたモノたちは、強弱や明暗のような二元論では括り得ない多様な視点を提示します。

マウン・デイ (ベトナム)
《疑いの象徴》 2018 年、シングルチャンネルビデオ 9分17秒

マウンデイは、《疑いの象徴》をベトナムのホーチミン市でのアーティストインレジデンスに際して制作しました。モニュメントとは、一般的に歴史や宗教、政治的思想等を背景に過去に起きた出来事を残すべく制作されます。作品の中で映される扉は、開発の進む都市を舞台に留まることなく移動します。1人の人間に支えられた扉は、あまりにも弱々しく映りますが、プロパガンダと権力の象徴としてのモニュメントと対比することで、受動的に受け入れている過去や価値観についての疑問を投げかけます。

モーミャメイザーチー (ミャンマー)
《スプラッシュ》 2015 年、シングルチャンネルビデオ 1分41秒

モーミャメイザーチーは、映像作家、ミュージシャン等として活動するミャンマー出身の新世代アーティストです。本展出品作《スプラッシュ》は、デジタル編集などを使用せず、古い16mmフィルムを直接コラージュして作られ、中には高度経済成長期の日本と思われる映像も含まれています。遺棄された過去のイメージたちがつなぎ合わされ、鮮やかな色彩と速いリズムとともに新しいイメージが生み出されます。忘却と記憶、消失と生成の循環の中に何を見ることができるのでしょうか。