コラム
コモンズ農園 テリトーリオ/文化的景観との有機的な関係性
植田 暁
植田曉氏による寄稿文は、2025年10月に和歌山県田辺市上秋津を訪れた経験をもとに、アートプロジェクト〈コモンズ農園〉を、土地の歴史、農業、集落、風景、人びとの暮らしや記憶が重なり合う「テリトーリオ」の視点から読み解いた論考です。
植田氏はまず、イタリアの「テリトーリオ」という概念を、都市や集落、田園、森林などが互いに切り離されることなく、人びとの暮らしを通して有機的に結びついた地域の総体として紹介します。そして、この視点をコモンズ農園がある上秋津の文化的景観に重ね合わせ、右会津川流域の地形や集落の構造、斜面に広がる果樹園、石垣、水路、お地蔵さま、生活道から見える風景などを丁寧に読み解いていきます。そこには、自然環境と人びとの営みが長い時間をかけて形づくってきた、上秋津固有の地域資源の豊かさがあります。
本稿では、原和男氏の案内による上秋津のまち歩き、座談会「田辺の文化的景観」、そして〈コモンズ農園〉の開園とみかんの植樹という一連の経験が重ねられています。これらを通して植田氏は、文化的景観とは、単に保存されるべき過去の遺産ではなく、現在の暮らしや農業、地域内外の人びとの対話を通して、その意味や価値が絶えず見直され、未来へと受け継がれていく動的な環境であることを示します。
植田氏は〈コモンズ農園〉を、歴史ある斜面の果樹園を継承する営農の場であると同時に、地域に暮らす人、新たに移り住んだ人、外から訪れる人が出会い、土地の記憶や価値を共有し直すための開かれた対話の場として捉えています。農作業、記憶、風景、知識、思考、人的交流が交差するこの農園は、上秋津というテリトーリオを構成する一つの「細胞」でありながら、地域の文化的景観を未来へとつなぐ、新たな可能性を育む場所でもあります。
本稿は、〈コモンズ農園〉が上秋津の土地や暮らしとどのように関係を結び、その文化的景観の一部として育っていくのかを考えるための重要な視点を提示しています。
寄稿文の全文は、〈コモンズ農園〉のウェブサイトでお読みいただけます。

会津川の利用の変化を語る原和男氏 写真:下田学

テリトーリオの授遺書に祀られさりげなく手入れされている地蔵が収まるお堂の一つ 写真:内野晴日

