コラム

  • 【アーティスト紹介 Vol.10】河野愛

    【アーティスト紹介 Vol.10】河野愛

    <変わりゆく街で、変わらぬ人々の記憶>-穏やかな入り江、海の道標としての灯台、墓石、そして時の移ろい。人々の記憶が波のように入り混じりながら、白浜の新しい物語を紡いでいく-河野愛は、布、骨董、写真等の多様なメディアを利用し、場所や人の記憶や時間、価値の変化に関する作品を発表しています。河野の祖父は、白浜温泉老舗「ホテル古賀の井」の創業者であり、彼女は幼少期より古賀浦の入り江で夏を過ごしていました。白浜エリア数カ所に設置された本作は、当時ホテルの屋上で輝いていたネオン看板を活か

  • 【アーティスト紹介 Vol.8】 アフザル・シャ―フュー・ハサン

    【アーティスト紹介 Vol.8】 アフザル・シャ―フュー・ハサン

    アフザル・シャ―フュー・ハサン×田辺駅前商店街のケミストリー<熊野へ向かう玄関口で思う、豊潤な海の物語>-熊野古道への玄関口で思いを馳せるのは、扇ヶ浜や江川港の先に続く黒潮が運ぶ豊潤な海の物語-「インド洋の真珠」と謳われ、世界中から観光客を集めるモルディブですが、一方で与・野党間の政争が絶えず、近年では中・印代理戦争の様相を呈しています。アフは砂絵によるアニメーションによって、観光と並ぶ重要産業であるカツオ、マグロ漁の過酷な労働やクーデター、地球温暖化による海面上昇といった楽

  • 【アーティスト紹介 Vol.9 】岸裕真

    【アーティスト紹介 Vol.9 】岸裕真

    岸裕真×アドベンチャーワールドのケミストリー<人新世を思う、脱人間中心主義>-地球温暖化や環境汚染といった人新世を今一度考え、未来を思うには海棲哺乳類や人工知能の力を借りた脱人間中心主義が必要だ-人工知能(以下AI)との共作である岸裕真の作品には、単一的な解や表現への疑義あるいは否定が通底しています。加えて、シンギュラリティ(コンピュータが人間を超える「技術的特異点」)以降の世界が、人類と機械による平和的な共存共栄の到来であることを予感させます。AIの力を借りることで見慣れた

  • 【アーティスト紹介 Vol.6】  アデ・ダルマワン

    【アーティスト紹介 Vol.6】 アデ・ダルマワン

    アデ・ダルマワン×川久ミュージアムのケミストリー<想像の翼を広げ、見渡す宇宙>-狂気とも呼べるこだわりが生み出した唯一無二の場所で出会うのは、想像の翼を広げ見渡す果てなき宇宙-世界最高峰の国際展ドクメンタ15(2022年)で芸術監督を務める、アート・コレクティブであるルアンルパの中心人物アデ・ダルマワン。本作は(現在の)哲学だけでなく、自然学や数学をも含む学究的営為の総体たる古代ギリシャ哲学と、ドイツ観念論からマルクス主義や実存主義へと連なる近代ドイツ哲学の関係性を、サッカー

  • 【アーティスト紹介 Vol.7 】長谷川愛

    【アーティスト紹介 Vol.7 】長谷川愛

    長谷川愛×アドベンチャーワールドのケミストリ<人新世を思う、脱人間中心主義>-地球温暖化や環境汚染といった人新世を今一度考え、未来を思うには海棲哺乳類や人工知能の力を借りた脱人間中心主義が必要だ-長谷川愛の作品は、バイオ・アートやスペキュラティブ・デザイン(課題解決型ではなく、その根幹に潜む問題について提起する考え方)などの手法により制作されています。本作では、爆発的な人口増加や食糧問題、更には貴重な海洋生物保護と生息環境保全に向けた解決視点を示唆しています。<長谷川愛につい

  • 【アーティスト紹介 Vol.5】志村信裕

    【アーティスト紹介 Vol.5】志村信裕

    アーティスト紹介 Vol.5 志村信裕×真珠ビルのケミストリー<昔日の面影を宿すビルを彩る、万華鏡>-かつては真珠で栄えた白浜駅前の面影を、今に伝えるビル。遊技場、飲食店、土産物屋から成る元祖コンプレックスを彩る映像の万華鏡-志村信裕は、日用品などに映像を映し出す独自のインスタレーションによって、心の奥底に潜むノスタルジックな感情を呼び覚まします。また、早くから美術館のようなホワイト・キューブから脱し、屋外で数多くの作品を投影してきました。本作は色とりどりのボタンが、タイトル

  • 【アーティスト紹介 Vol.4】ホー・ツーネン

    【アーティスト紹介 Vol.4】ホー・ツーネン

    ホー・ツーネン×川久ミュージアムのケミストリー<想像の翼を広げ、見渡す宇宙>想像の翼を広げ、見渡す宇宙 狂気とも呼べるこだわりが生み出した唯一無二の場所で出会うのは、想像の翼を広げ見渡す果てなき宇宙。歴史や思想の豊かな文脈から、時に演劇的手法を取り入れた作品を制作するホー・ツーニェン。本作は、現在はナショナル・ギャラリー・シンガポールとなった旧最高裁判所を舞台に、クィーンの名曲にのせて出演者オーディションの記録をつなげ作品化しています。裁判官と容疑者の演者に多民族国家にして、

  • 【アーティスト紹介 Vol.3】山内光枝

    【アーティスト紹介 Vol.3】山内光枝

    山内光枝×田辺駅前商店街のケミストリー<熊野へ向かう玄関口で思う、豊潤な海の物語>-熊野古道への玄関口で思いを馳せるのは、扇ヶ浜や江川港の先に続く黒潮が運ぶ豊潤な海の物語-海に生きる人々の生活現場に身を置き、そこを起点に立ち現れる世界観を作品化する山内光枝。タイトルであるカブグァスとは、航海で方角を知る時に目印となる星を意味するビサヤ語(主にフィリピン中南部で使用されている言語)です。済州島の海女学校で体得した素潜り技術により撮影された本作は、あらゆるものを巻き込みながら流動

  • 光の機能と紀南の価値

    光の機能と紀南の価値

    〈今回のゲスト〉株式会社タカショーデジテック代表取締役社長フェスタ・ルーチェ実行委員会会長株式会社青山ガーデン取締役古澤 良祐(ふるさわ りょうすけ)さん愛知県名古屋市出身。2002年、株式会社タカショーに入社後、その翌年に株式会社タカショーデジテックを設立。ガーデニング用の照明器具から店舗看板、イルミネーションまで、LEDを使った製品を幅広く製造している。また、イルミネーションイベント「フェスタ・ルーチェ」実行委員会会長として、世界各地のクリスマスや冬の文化を広く伝えるため

  • 【アーティスト紹介 Vol.2】一柳慧

    【アーティスト紹介 Vol.2】一柳慧

    一柳慧×南紀白浜空港のケミストリー<心を解放し、音の旅へ>-世界に開かれた空の港を発つ旅人には、既存の価値を疑い、偶然性を積極的に受容する姿こそが相応しい-五線譜ではなく、自由な図形などを用い書かれた「図形楽譜」は、奏でる側の解釈で一期一会の演奏となります。一柳慧は、音楽にこうした偶然性を取り入れることで、作曲家による厳密なコントロールという西洋音楽の在り方を見直しました。河合拓始の多彩な奏法を駆使した、空間性を感じさせる演奏は、私たちを斬新な音の旅へと誘うことでしょう。<一

  • 紀南の学校教育と未来

    紀南の学校教育と未来

    紀南アートウィーク対談企画#25〈ゲスト〉西田 拓大白浜町立富田中学校 教頭/ 曹洞宗如々山不動寺 住職SDGs(Sustainable Development Goals / 持続可能な開発目標)に強い関心を持っており、その本質を伝え、生徒たちの「当事者意識」を育むための取り組みを推進している。また、学校教育現場の現状にも課題を見出し、教師自身が主体的に問題解決に取り組めるような「仕組みづくり」を探求している。https://tonda-j-h-s-shirahama-to

  • 【アーティスト紹介 Vol.1】アピチャッポン・ウィーラセタクン

    【アーティスト紹介 Vol.1】アピチャッポン・ウィーラセタクン

    アピチャッポン・ウィーラセタクン×高山寺のケミストリー<積層する祈りが誘う、深遠な異界>-縄文から、聖徳太子、弘法大師そして山の精霊まで、あらゆる祈りが積層する古刹が誘う深遠な異界への扉-アピチャッポン・ウィーラセタクンは、数々の展覧会参加と併行し映画監督としても活躍。『ブンミおじさんの森』(2010年)で、第63回カンヌ国際映画祭のパルム・ドール(最高賞)を受賞しています。母の庭へのオマージュである本作は、むせかえるような緑濃いジャングルと、そこに棲むヴィクトワール・ドゥ・