「実り / 果実を巡る旅」会場紹介

地元農家達が共同出資で設立した「秋津野直売所きてら」に隣接する「ゆい倉庫」では、地域で生産されたかんきつ類などから様々な加工品が製造・販売されています。地域の生産者の方々のもとでたわわに実った果実が集められ、販売そして加工されるこの場所は、果実の一つの終着地点ともいえます。しかし、私たちが食すことで「みかんの旅」は終わるのではなく、体を通して、人間を含めた大きな循環の途中にあるとも考えられます。

本会場では、廣瀬智央による柑橘類などを使用したインスタレーション(空間展示)を展開します。私たちが普段目にするみかんをはじめとした柑橘とその加工品、またみかんの皮や食べれない部分を使用した再生品などの展開を試みることで、みかんを通じて私たちの生活と産業、自然環境の大きな循環を考えます。

また、「みかんの苗木の旅」と題した長期ワークショップ(プロジェクト)を開始します。みかんの苗木を田辺市や紀南在住の参加者(=里親)と共に育て、将来的には「コモンズ農園(誰でもが利用できるみんなの農園)」としての新しい農地と「共有すること」のあり方を考えます。

【展示会場】

秋津野ゆい
地元の農家や市内の梅加工業者ら事業者、個人が出資し、資本金1500万円で 2019年11月に設立。農家の高齢化と後継者不足により耕作放棄地が増える中、田辺市上秋津の農家達が田畑を復活させたり、農作業を引き受けたりする目的で農業法人を立ち上げた。作業の軽減化、省力化、自走草刈り機、梅の枝などの樹木粉砕機など農機具のレンタルも行う。また、地元の農業法人やJA、行政ともコンソーシアムを組み、ICT関連事業者と連携してのスマート農業の調査研究や実践も開始。このほか地元の秋津野直売所『きてら』都市農村交流施設『秋津野ガルテン』とも連携し事業を展開している。


〒646-0001 和歌山県田辺市上秋津4558-8
https://akizuno.jp/
開館時間:8:30- 16:30

【出展作家のご紹介】

廣瀬 智央/satoshi hirose
美術家
廣瀬智央は、インスタレーション、環境への介入、パフォ−マンス、彫刻、写真、ドローイング、そしてより大きな意味でのプロジェクトなどのメディウムを使い、現実と記憶の世界が交差する作品を創出する現代美術家です。境界を越えて異質な文化や事物を結びつける脱領域的な想像力が創造の原理となっており、目に見えない概念を目に見えるものへと転換する試みが、廣瀬の作品に一貫してみられます。日常の体験や事物をもとに、世界の知覚を刷新する表現をつくりだしています。

廣瀬は純然たる本質的な日常性を、芸術的なレベルへと移転させる作業を行います。ありふれた日常の事物を別の文脈に置き換えることによって、美の基準や変化しつづける存在の不確かさ、あらゆる境界との交差領域にうまれる関係性などを思考し、アートの可能性を示唆します。アーティストよって切り取られた日常の断片は、他者との共通点を理解し、差異を尊重するといった他者を意識するリアリティーにつらぬかれています。それは、懐疑的な視点を持ち、身動きできないような固定観念を振払うように、世界中を移動する作家の越境精神に反映されています。移動するアーティストとして文化と文化の間に生きるというメタカルチャー的な在り方は、国家や民族といった枠組みによる文化的背景がアートを具現化するというような、単純なステレオタイプな在り方を越えていきます。

東京生まれ。現在ミラノを拠点に活動。多摩美術大学卒業後にイタリア政府給費奨学生として渡伊。ポーラアート財団の研究奨学金を得てミラノ・ブレラ美術アカデミーを修了。文化庁在外研修員としてニューヨークに滞在。水戸芸術館、広島市現代美術館、アーツ前橋、イタリアのルイジ・ペッチ現代センター、ボローニャ近代美術館、モリーゼ文化財団、ヴィスコンティ宮殿、オーストラリアのシドニー現代美術館など世界各地の展覧会に多数参加。

Photo © Emy Amaro 

Satoshi Hirose 公式HP
https://www.milleprato.com/

【廣瀬さんの作品イメージ ドローイング】

【紀南でのフィールドワークの様子】

【会期中の様子】

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