コラム

紀南と地方銀行の未来

紀南アートウィーク対談企画#22

〈ゲスト〉

阿田木 淳
紀陽銀行 白浜連合店‐統括支店長(現田辺連合店‐統括支店長)
白浜支店と西牟婁郡内の3店舗を統括する、支店長
「地域に貢献したい」という気持ちを胸に、紀南地域の事業者を支えている。
https://www.kiyobank.co.jp/

吹田 和彦
紀陽銀行 営業支援部長 兼 地方創生推進室長
2つの役職を兼務
マーケティングの知見を活かして、地域の活性化のために尽力している。

大橋 一喜
紀陽銀行 地方創生推進室 部長代理
地元の人々と行政との橋渡しをする、地方創生推進室の部長代理
様々な組織での経験を通して、広い視野を持って地方創生に尽力している。                       

〈聞き手〉
藪本 雄登/ 紀南アートウィーク実行委員長

紀南と地方銀行の未来

目次

1.お三方のご紹介
2.紀陽銀行の紀南史
3.銀行の役割とは?
4.地方創生と輸出の関係性
5.銀行の経営戦略とアート
6.将来に向けた政策
7.地域の良い物を磨く

1.お三方のご紹介

藪本:
今回、金融機関の視点から紀南の未来をどのように考えていくべきなのか、今回は紀陽銀行さんからお話を伺いたいと思います。紀南地域における地方銀行の機能、役割について対話ができればと思います。まずは、お三方から簡単な自己紹介をお願いいたします。

阿田木:
紀陽銀行白浜連合店の統括支店長(当時)をしております、阿田木と申します。和歌山県美浜町の出身で、入行時は御坊支店だったのですが、若い頃は、主に大阪で働いていました。大阪ではずっと支店で勤務しており、3ヶ店の支店長もさせていただきました。2年半前に白浜連合店-白浜支店で働くことになり、20年ぶりに和歌山県内で勤務しております。白浜連合店は連合店舗化しており、西牟婁郡内にある朝来支店、日置支店、周参見支店を統括しております。

元々、入行志望動機として「地域に貢献したい、地元で支店長をしたい」という気持ちがありました。白浜連合店の統括支店長になったことで、入行した頃の夢が叶ったような気がしています。

吹田:
吹田と申します。紀陽銀行へ平成3年に入行し、今年で31年目になります。大阪府堺市の出身で、紀陽銀行に入るまでは、和歌山とほとんど縁がありませんでしたが、紀陽銀行入行後、大阪で働いたのは5年ほどで、残りの25年間は和歌山県内で働いています。

元々、銀行員になりたいという夢があったわけではありませんでした。私が入行したのは金融自由化*1が進んでいた頃で、当時の紀陽銀行の人事部の方からのお話が、すごく印象に残っていますね。「新しい競争の中で、形のない金融商品をお客様に浸透させていくためには、マーケティング力が必要」という内容でした。「形のあるものにしかマーケティングの世界は無い」と思っていたので、非常に驚きました。そして、大学生のときに専攻していたマーケティングを活かせたらと思い、入行を決めました。

*1金融自由化とは、銀行、証券会社、保険会社等に対する規制を緩和して金融機関の業務を自由化していくこと
自由化とは(コトバンク)

大橋:
地方創生推進室の大橋と申します。和歌山市の出身です。昨年4月から地方創生推進室に異動になり、地域の活性化や地方創生という仕事に携わっております。主に行政、自治体の方が取引先になるのですが、地域の事業者様との交流もございます。

昔は、大阪や和歌山の支店での勤務が多かったのですが、30代後半のときに2年間、和歌山県庁へ業務出向し、地元の企業様向けの振興策を行う部署に在籍していました。また、地方創生推進室に異動になる直前までは、和歌山市役所支店で支店長をしておりました。和歌山市が抱える行政の課題について、何か銀行がお手伝いできるようなことがないかという視点で仕事をさせていただきました。

藪本:
皆さん、自己紹介いただきありがとうございました。

地方創生推進室では、他にどのようなお仕事をされているのでしょうか?

大橋:
地域の人々が「自分事」として白浜の将来を考えるための「南紀白浜 みらい創造委員会※」という組織の立ち上げに協力し、地元の方々に「こういうことができたらいいですよね」と、私たちから声を掛けて回ったり、行政にも働きかけたりしていました。

また、紀陽銀行、串本町、古民家再生をしている「株式会社NOTE」さんと三者連携を組み、串本町にある、100年超えの古民家を宿泊施設に改修するということもしています※。串本の町全体を1つの「町宿」と見立て、地域の活性化を目指しています。特に、古民家の改修費用など、主に資金面ではありますが、支援をさせていただいております。

*参考 南紀白浜 みらい創造委員会 @mirai.nankishirahama(Facebook)

*参考 本州最南端の町でハイドネーションな滞在を 串本(NIPPONIA)

*参考 「『串本古民家・まちづくりプロジェクト』第一弾となる 『NIPPONIA HOTEL 串本 熊野海道』の開業について」 (2019年6月10日、法人・事業主のお客さま、株式会社紀陽銀行 Press Release)

*参考 「『串本古民家・まちづくりプロジェクト』第2弾となる 『NIPPONIA HOTEL 串本 熊野海道』3棟目オープンについて」(2021月5月27日、法人・事業主のお客さま、株式会社紀陽銀行 Press Release)

藪本:
なるほど。地方銀行が有する信用力を基礎に、紀陽銀行は「地域のファシリテーター*2」としての役割を担われているということでしょうか?

*2 人々の活動が容易にできるよう支援し、上手く事が運ぶように舵取りをする役割を持つ人

ファシリテーションとは(FAJ:特定非営利活動法人 日本ファシリテーション協会 ホームページ)

大橋:
そうですね。地元の方と事業者様と行政を繋ぐ役割をできればと思っています。

2.紀陽銀行の紀南史

出典:沿革(紀陽銀行について、株式会社紀陽銀行 ホームページ)

藪本:
早速ですが、紀陽銀行さんの歴史についてお伺いします。紀陽銀行さんは1895年(明治28年)に創業されていますが、どのような形で展開されてきたのでしょうか?

阿田木:
元々、紀南地域には12ヶ店あり、そのうちの10ヶ店は明治からスタートしました。紀陽銀行は、地域の金融機関の買収・合併により、形を変えながら今に至っています。

例えば、田辺支店は元々、1885年(明治18年)に「共栄社※」という名前で設立されました。その後は、串本銀行、日高銀行、田辺銀行へと形を変え、最終的には1941年(昭和16年)に紀陽銀行に統合されました※。現在では紀南地域には8ヶ店が営業しています。

*参考 共栄社(銀行変遷史データベース)

*参考 (株)紀陽銀行(銀行変遷史データベース)

大橋:
また、紀陽銀行は現在、自治体の指定金融機関※3の役割を果たしています。和歌山県内の31の自治体のうち、21の自治体で紀陽銀行が指定金融機関となっています。紀南地域では10の自治体のうち8先で指定金融機関となっていますので、紀陽銀行の存在は認められていると考えてよいのではないかと思っています。

*3 公金の収納及び支払の事務を取り扱うよう、地方公共団体から指定された金融機関

「指定金融機関制度」(『地方自治法関係実務事典』、1979年8月1日、p.2447-2448、第一法規株式会社)

藪本:
なるほど。紀陽銀行さんは明治時代から展開されていますが、当時はどんな資金ニーズがあったのでしょうか?

阿田木:
明治時代と言えば、渋沢栄一が銀行を作った頃ですね。産業がまだ多くなかったはずなので、(事業に)貸し出すという概念が、世の中に浸透していなかったのではないかと思います。

大橋:
元来、銀行には、預金をお預かりするという役割があります。また、税金を収納する役割や、給付金をお渡しする役割も担っていますが、今と同じように、昔も、これらの役割を果たしていたのではないかと思います。

3.銀行の役割とは?

出典:個人向けローン総合案内(株式会社紀陽銀行 ホームページ)

藪本:
先ほど、私から「銀行には、ファシリテーターとしての役割があるのではないか」という質問をさせていただきましたが、その他に、銀行にはどのような役割があるのでしょうか?

阿田木:
銀行の役割は、人間の体で言うと「輸血する機能」だと思いますね。地域に血を与えることで、経済を活性化させるという役割です。地域が動くことで経済も動いていくのではないかと考えています。

藪本:
御社の理念である「地域社会の繁栄に貢献し、地域とともに歩む」ということと、「堅実経営に徹し、たくましく着実な発展をめざす」ということからも感じ取れるように※、堅実にその機能を果たされてきたということでしょうか?

*参考 経営理念・目指す銀行像(株式会社紀陽銀行 ホームページ)

阿田木:
堅実経営は、標榜するまでもなく、銀行の基本です。バブル経済崩壊後に大変厳しい経営環境に陥った教訓もあります。ただ、地方銀行は融資を止めることはできません。融資を止めてしまうと、地域企業の倒産、廃業、事業停止に繋がってしまいますから。

紀陽銀行も、かつては不良債権をたくさん持った時期があります。良いことでないのは承知していますが、個人的には、これは「地方銀行の勲章」だと思っています。不良債権を抱えない地方銀行は、地域のために働いていない、つまり、仕事をしていないのと同じだと考えます。地域に根付いて事業をやっていく限りは、そういうリスクをとらないと、地域に貢献できないと思います。もちろん、不良債権ばかりではだめですが、和歌山の地域に根ざして活動している人たちは、基本的に逃げも隠れもしないし、銀行を騙す人もそういません。

藪本:
ありがとうございます。

御社のロゴマークに「銀行をこえる銀行へ*」という言葉がありますが、こちらはどういう意味なのでしょうか?

*参考 経営理念・目指す銀行像(株式会社紀陽銀行 ホームページ)

大橋:
堅実は堅実でも、よくテレビドラマなどで使われている「晴れた日に傘を貸して、雨が降ると取り上げる」みたいなイメージをお持ちの方もいらっしゃるかも知れません。そういった「銀行」のイメージを塗り替えて、地元にお住まいの方や事業者の方に「銀行なのに、そこまでやってくれるのか!」と思っていただけるような姿勢が必要とされているのだと思います。地域のニーズに全力でお応えすることが、地方銀行の役割なのではないでしょうか。

藪本:
仕事柄、私は銀行員さんとやり取りすることが多いのですが、他方、銀行員さんは、何でもやりすぎて大変そうだというイメージがありますね。

大橋:
よく銀行の中でも「そんなことまでやってるの!?」と言われるんですよ(笑)。何かを望んでいるお客様がいらっしゃったら、まずはお客様のところへ行ってお話を聞く。これが一番大切だと思いますね。我々で解決できないときは、対応できる方をお連れすることもあります。一見、収益に繋がらないようにみえますが、地元が活性化することで巡り巡って、銀行にも利益が回ってくるだろうと思っています。極端な例として「人生相談」や「娘の結婚相手を探して」などもありますが、信頼感から頼んでいただいているのだろうとありがたく思っています(笑)

4.地方創生と輸出の関係性

出典:トップページ(株式会社紀陽銀行 ホームページ)

藪本:
今回の紀南アートウィークの中で、私たちが一番重要視しているのは「輸出」なんですよ。

諸所のデータを見ても、紀南地域の内需が縮小することは明らかです。その場合は、どこかの大内需に抱きかかえられるか、もしくは、輸出によって外需にアクセスし、地域を維持させるかの2択に直面すると考えています。その中でも、私はカンボジアでの経験を踏まえて、巨大内需に依存するというあり方について、「その地域に住んでいる人たちは幸せになるのだろうか?」と、疑問に思っています。紀陽銀行において、「輸出」という観点で考えていることや担われている役割はあるのでしょうか?

大橋:
最近、和歌山市の市場関係の部署の方とお話しする機会があり、生産者の方には「地元の産品を海外でも売っていきたい」という思いを持っていると知りました。その担当者の方と別件でお話をした際に、紀南地方で魚の加工をおこなっている会社の話題になり、「海外へ輸出できる可能性は十分あるのではないか」という話をしてくださいました。ちょうど今、私の知り合いがその会社にいるので、何か化学反応が起きないかと思って二人を引き会わせたところ、話が弾んで商売に繋がりそうな話が出来たそうです。

物流の発展により、地元で調理していたものを容易に海外に運べるようになったため、海外へ輸出するハードルも非常に下がっているような気がします。情報と物流が上手く噛み合えば、地元で眠っているものを欲しいと思っている人と、出会えるのではないでしょうか。

藪本:
この10年ぐらい、地方自治体さんや地方のプレーヤーさんからお受けした、輸出の案件に関わってきたのですが、「マーケットイン*4」の考え方や、それに関するローカライゼーションなどでは限界があると思っています。これまでアジアへの進出、展開に関与してきた中での私なりの結論です。本当に価値のあるものは、対象マーケットを選ばず、対象国向けにローカライズしませんし、全世界統一価格、マーケティング、ブランディングであることがポイントです。実際に、本業の中では、そのようなプロダクトを持っている会社が圧勝しているようにも思います。それを地域で分かりやすく実現しているのが現代アーティストたちではないかというのが私の仮説です。今回、アートの力を借りて地域自体の「全世界輸出」を実現したいと思っているのは、グローバルな世界でも耐える強度を持った商品、サービス、特にプロダクトアウト*5的な要素を強く持ったものが地域に必要であり、それを中核として輸出を実現する必要があるからです。プロダクトの深堀りが非常に重要で、このようなプロダクトを持った企業を、地方銀行さんと一緒に誘致または生み出すことができないかと考えています。それが地方銀行の維持発展にも繋がるのではないかと確信しています。

*4 商品の企画開発や生産において、消費者のニーズを重視する方法

   マーケットインとは(コトバンク)

*5 商品の企画開発や生産において、作り手の論理や計画を優先させる方法

   プロダクトアウトとは(コトバンク)

5.銀行の経営戦略とアート

出典:経営理念・経営方針・ロゴマーク(紀陽銀行について、株式会社紀陽銀行 ホームページ)

藪本:
紀陽銀行さんは、アート関係での活動が結構ありますよね。例えば、今年の10月には「UNKNOWN ASIA 2021*」の開催が予定されていますが、紀陽銀行さんは特別協賛企業として名を連ねていますね。また、紀陽文化財団も設立され、文化支援活動が活発とお見受けします。銀行業務とアート分野との関係はどのように考えておられるのでしょうか?なお、実際にドイツ銀行のコレクションなどは世界有数の知名度を誇っており、銀行がアート、文化の大パトロンになることも有名な話です。

*参考 UNKNOWN ASIA 2021 ホームページ

吹田:
「FM802*」さんともずいぶん昔からコラボをさせていただいているのですが、元々の発想は「大阪で紀陽銀行の知名度を上げること」からスタートしています。おかげさまで大阪での紀陽銀行の知名度は上がってきており、現在では創立120周年の際に定めたブランドスローガンである「銀行をこえる銀行」を目指して銀行とは接点が薄い若年層へのブランドイメージの向上を図っています。

だから、正直、アートというよりは、経営戦略の一つなのかもしれません。和歌山では高齢者層のお取引が多いのですが、大阪では「次世代を担う若者層に、紀陽銀行をどうやって浸透させていくか」という狙いがありました。

*参考 FM802 ホームページ

*参考 FM802 SPECIAL LIVE 紀陽銀行 presents REQUESTAGE 2021(FM802 ホームページ)

藪本:
銀行の知名度を上げ、新たな層を取り込むというのは、まさに戦争に近いですよね。大阪という大都市での内需の取り込みにおいては、そのようになるのは仕方ないとは思いますが……。

吹田:
行内においても、FM802さんとコラボすることに対しては様々な受け止め方があると思います。これをコストと見るか、投資と見るかということが常に議論されますが、将来への投資として続けていくことが大事だと思っています。

藪本:
企業にとっては重要な問いですね。ここはトップの感性、判断に委ねられる気がします。都市に住む人々や企業、つまり、都市の大型の内需を取り込んでいくことが、ある意味、事業としては容易かつ分かりやすい方法なのかもしれませんが、それが持続可能なのかどうかについては疑問があります。内需の世界は「奪われたら取り返す」の繰り返しとなりますので、私は、アートには大都市での広報戦略を越える以上の価値や力があると確信しています。

また、地方銀行の役割として、地方の会社を育てることについてはいかがでしょうか?先ほどの輸出のお話と繋がるかもしれませんが、会社育成に時間がかかることや、手法が固まっていないことも踏まえて、やはり困難なのでしょうか?

吹田:
地方銀行として地方の会社を育てるという役割を担うということは、大変重要なミッションだと思っています。現状課題としては、「全体として事業者数が減っていく中で、いかに後継者が円滑に事業を引き継いでいくか」というのは大きな課題です。同族間で単純に承継することに加えて、例えば、都市部でそれなりの経験を積んだ方を地方にお呼びして、経営陣として事業を担ってもらうという橋渡し的な働きかけができればと思っています。地方の中で探しても、そのような経営人材を発掘することは難しいんです。

藪本:
恐らく、そうだと思います。ただ、都市での経験が必ずしも正しいともいえなくなってきていると思います。その意味で、紀南アートウィークとしては、中学校、高校生向けのワークショップやセミナーに何より力を入れています。一人でもいいので、全世界の外需にアクセスできる人材を生み出すことが重要だと考えます。

また、それが御社の融資に繋がるような「地方から全世界でビジネスができるプレーヤー」をどう育てていくかということが、地域の維持発展と親密に関わっているような気がします。外貨を稼ぐプレーヤーを紀南から生み出せるのか、誘致できるのかについては、継続的に議論をさせていただきながら、紀陽銀行さんとコラボレーションさせていただければと思います。

6.将来に向けた政策

出典: Kiyo Big Advance Youtube動画 (株式会社紀陽銀行 ホームページ)

藪本:
将来に向けた政策として、紀陽銀行はどのようなことを考えられているのでしょうか? 

*参考 トップメッセージ(株式会社紀陽銀行 ホームページ)

吹田:
やはり、和歌山の本店があり、和歌山のお客様があっての紀陽銀行だと思っていますので、基本的にはこの路線を外れることはないと思います。「地域のために、紀陽銀行は何ができるのか」という頭取の考えを基に、我々も業務を遂行しております。ただ、リソースも限られているので、有限である資源をどのように配分すべきなのか、難しいところですね。

藪本:
資源の配分については、活動しながら考えられているということでしょうか?

吹田:
そうですね。我々は、和歌山の中では「観光」の部分に、ポテンシャルがあると思っています。例えば、「誘客をどうするか」という観点から、地域を活性化させる「まちづくり会社」に出資するということもしています※。

また、今年、串本町に日本初の民間ロケット発射場が誕生する予定で、串本町ではロケットにちなんだ商品の開発が行われています※。我々も協賛企業として、地元の経済の活性化に向けて尽力しております。

*参考 「【地方創生】『わかやま地域活性化ファンド』第1号投資先の決定について」(2015年10月5日、法人・事業主のお客さま、株式会社紀陽銀行 Press Release)

*参考 「『宇宙グルメ』開発へ ロケット発射の串本町で有志」(2021年6月9日、紀伊民放AGARA)

*参考 本田景士「◆祝!ロケット場誕生記念◆宇宙をテーマに食を巡る“まるごと串本ロケット”を全国へ」(2021年6月6日、CAMPFIRE)

藪本:
なるほど。紀陽銀行さんはファシリテーター、そして、時には輸血の担い手として、地域の活性化を促す存在になっているのですね。

吹田:
「地域の良い物を磨き、発信すること」は、まさに、地方銀行としての重要な役割だと思っています。

今、全国の観光地が「アフターコロナ」を見据えて、「コロナがおさまったら来てね」と競争しています。しかし、本質的に考えて、コロナ前までのやり方でいいかどうかは課題です。そこでしか見られないもの、感じられないものを発掘したり、再発見したりすることは、地元のことをよく分かっている地方銀行こそができることであり、やらなくてはならないことなのではないかと考えています。自治体や地元の事業者さんと一緒になって、集客に結び付けていきたいと思っています。

7.地域の良い物を磨く

出典:会社概要(紀陽銀行について、株式会社紀陽銀行)

藪本:
「地域の良い物を磨く」という言葉には、アートとの接点もあるような気がしています。「磨く」とは、具体的にはどのような意味なのでしょうか?

吹田:
地元にいると全然気づかなかったものが、外から見ると光輝いている、ということがたくさんあります。それらをいかに発掘して、世の中に提示したいと考えています。「発掘してブラッシュアップしてアピールする方法も、地元の人と一緒に考え抜く」ということが「磨く」ということかと思います。あまり意識はしていないのですが、もしかすると、アート的な実践を気づかずに実施しているのかもしれませんね。

藪本:
我々は、アートの分野では「キュレーション*6」に特に関心を持っていますが、この分野で、紀陽銀行さんと一緒に何かをやりたいと考えています。例えば、紀南地域で使われていない場所について、場を磨き、再生するきっかけを作るというのもいいかもしれません。

*6 特定の視点を持って収集、選別、編集することで新しい価値を持たせ、それを共有すること

   キュレーションとは(用語集、HRプロ)

出典: The Localist (株式会社紀陽銀行 ホームページ)

吹田:
すごく面白そうですね。紀陽銀行では店舗の統廃合をしているのですが、廃店になった後の活用方法も考えています。地元の方に今後もご利用いただけるよう、銀行の空き店舗を活用するということは可能だと思いますね。

また、キュレーションに関連して言えば、我々が出資した地域商社「株式会社ロカリスト」が、和歌山県の特産品を販売する「TheLocalist*」という店舗を、大阪の難波にオープンさせるんですよ。新型コロナの影響により、オープンは延期となってしまいましたが、晴れて開店できたときには、和歌山県で作られた約100種類のジャム等を販売する予定です※。

今は、地元にどういう産品や隠れた商材があるのかを発掘している状況ですね。今後は、この店舗を、和歌山県の良さをアピールする拠点にしようと考えています。

*「TheLocalist」は6月24日にオープンしました

*参考 地域商社ロカリスト/Localist @localist_w(Instagram)

*参考 The Localist/ローカルライフスタイルストア @localist_store(Instagram)

*参考 The Localist/ロカリスト ライフスタイルストア @localiststore(Facebook)

*参考 「地域商社『ロカリスト』との連携による NAMBA SQUARE の『地域との価値共創拠点』へのリニューアルについて ~南海なんば駅2階に和歌山県の特産品をプロモーションする拠点がオープンします!~」(2021年4月1日、法人・事業主のお客さま、株式会社紀陽銀行 Press Release)

藪本:
なるほど。ロカリストさんが選び抜いた地元の特産品を、大阪を拠点にして販売する。これもまさに、キュレーションだと言えますし、地域の良い物を「輸出」することにも繋がっているような気がしますね。

大橋:
県内各地で頑張っておられる農家さんを回ったりするなどして、隠れた名産品がたくさんあることを情報として蓄積しています。生鮮品と違い、二次加工品であるジャムは流通等の課題はクリアできます。和歌山は果実王国でもありますし。地元の産品をとりまとめて多くの人に知ってもらうような役割を期待されていると思っています。

吹田:
銀行法の中には出資規制などがあり、規制によってできないことも多くありますが、常に、地域のために何ができるかを考えています。「地元のことなら、紀陽銀行にお任せください!」という気持ちで、今後も、地元のお客様のために全力を尽くし、「地域の良い物」をもっと広めていきたいと思っていますね。

藪本:
まさに、地元のために走り続ける紀陽銀行さんだからこそ、紀南アートウィークをきっかけにコラボしたいと思いました。それに、紀南にはポテンシャルがありますから。

阿田木:
ぜひ、よろしくお願いします!

地域の活性化や経済の発展に繋がるような事業を、一緒にできたら嬉しいです。

大橋:
どのようなコラボになるのか、今からとても楽しみですね。

吹田:
今後とも、よろしくお願いいたします!

藪本:
こちらこそ、よろしくお願いいたします!
本日は、お時間を頂きましてありがとうございました。

<編集>
紀南編集部 by TETAU
https://good.tetau.jp/

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