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コラム

対談企画 #4 『世界につながるお茶文化とは?』

◆紀南アートウィーク対談企画 #4

<今回のゲスト>

株式会社モリカワ 代表取締役
森川 直巳さん

創業昭和2年、約100年続く株式会社モリカワの代表取締役
食生活の移り変わりに柔軟に対応した食材の卸業務、そして、地域に根付く茶葉、独自の技術によって焙煎されたコーヒー豆の販売に尽力されています。
https://www.morikawa-office.co.jp/

<聞き手>

薮本 雄登
紀南アートウィーク実行委員長

<編集>
紀南編集部 by TETAU
https://good.tetau.jp/

世界につながるお茶文化とは?

1.株式会社モリカワの歴史

薮本
本日はお時間いただきまして、また、今回の企画にご参加いただきまして、誠にありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。

森川さん:
株式会社モリカワ、3代目になる森川です。よろしくお願いします。
我が社は、お茶の小売から始まり、戦後、2代目からコーヒーを扱い始めました。喫茶店にコーヒーを卸すことに付帯して、メニューにあるカレーや焼肉定食という業務用食材も扱うようになり幅を広げてきました。新宮にはグループ会社イヌイがあります。大阪の天満橋でパスタカフェを展開したところでしたが、こちらはコロナの影響を受け苦労しています。いろいろな意味で手応えがあるので、これから頑張っていきたいと思っています。
田舎でぼちぼち頑張っている会社です。

薮本:
ホームページを拝見させて頂きました。
森川六郎さんが創業者ということですね。昭和2年というと、1920年代。なぜ、お茶だったのでしょうね?看板には、「コーヒー、紅茶、洋酒、食料品」と書かれていますが、当時のブームもあったんでしょうか?コーヒー文化というのは、当時、先行していたんじゃないですか?

森川さん:
父親の話によると、創業時から、神戸の商社と付き合いがあったみたいです。戦後、買い出しに行って、進駐軍のオレンジジュースやインスタントコーヒーなどに触れて、コーヒーを扱うようになったのではないかと思いますね。幼少期の記憶ですが、コーヒーの需要はほとんどなかったように思います。

薮本:
地産地消だったんですか?

森川さん:
コーヒーに関しては、輸入です。コーヒーの原料、生豆を仕入れて、焙煎、加工は自分のところでやってまして、それが今もうちの強みです。
お茶については、他府県からも買って欲しいという声があって取引していました。お茶は今よりもはるかに多く飲まれてましたよ。現在は、地元である市鹿野(いちかの)の川添茶、本宮の音無茶、古座川の色川茶あたりも扱わせてもらっています。
日本全体として、お茶の消費量の減少、農家さんの高齢化で厳しいところはあります。とは言え、地元のお茶という愛着もあるようで、ある程度の量はご購入いただいています。

※川添茶を生産している市鹿野(赤枠)の航空写真。集落の中央を通るように日置川があり、自然豊かな地域です。

2.小売業としての役目

薮本:
川添茶のウリはどんなところですか? 

森川さん:
川添茶は、農家さんの努力により非常に品質の良いものができていて、静岡の市場でも高い評価を得ています。際立っているのは、リーダーの上村さんが、長い間努力をされてきたことでしょうか。お茶栽培の研究もそうですし、加工に関しても「手揉み茶」を作るなどして、全国的にも有名な方です。
「手揉み茶」は、茶っ葉を蒸して人の手で揉んでお茶を作る方法で、すばらしいお茶ができます。上村さんの手揉み茶は、作れても少量なので、独自のルートで一定のお客さんに販売されているようです。手揉み専用のお茶の木もあるくらいで、こだわり抜いて作られているので価値も高いです。

薮本:
地域の生産者さんたちの意思や伝統を抽出して商品化し、和歌山県、もしくは都市に販売していくという機能を担われているという感じですか?

森川さん:
「担っている」というところまで胸を張って言えませんが、そうしていきたいと思っています。市場に農産物や水産物を出すとなると、安定した供給量が求められますが、地域の生産者さんとの関わりの中では、供給量を保つのは難しいところがあります。
生産量を増やすことなく、今ある量で売っていく方法も探っています。

薮本:
まだあまり掘り起こされていませんが、紀南には、光り輝いているいろんな歴史、文化、風土があると思っています。そこを掘り起こし、その価値を全世界に伝えられたら、少量生産で、高付加価値のものが輸出できるんじゃないかと思っています。
今回の紀南アートウィークはそのきっかけとなり、10年、20年、30年かけてやっていけたらなと思っているところです。

商品自体は汎用なものでも、「なぜ、我々はこれを作るのか」「なぜこの価格なのか」というところをちゃんと伝えられ、さらには、「創業者の思いはここにあるんです」といった物語性もある、そういう会社が伸びているような気がしています。外側はグローバルなんですが、内側には独自の文化を抽出してエッセンス化したものがあり、全世界の人が共感できるように表現されているということだと思います。

そういう意味でも、「なぜ紀南の人がお茶を飲むのか」というところに興味がありますね。「なぜ日本人はお茶を飲むようになったのか」というところから掘り下げていくと、おもしろいだろうなという気がします。

森川さん:
商売をしていて、そこまでお茶について掘り下げたことはないかもしれません・・・笑

薮本:
みなさん、そうなんです。笑 

森川さん:
私たちは、商売人として物を売らせてもらってます。なぜこれは美味しいのか、どんな風にしたら美味しくなるのかというようなことを、ちゃんとお話して伝えていくことを、愚直に素直にやっていくことが大事だと思います。

薮本:
そうですね、まさにそこに思想性があって、「どういうお茶をおいしいと思うのか」とか、「なぜそれを美味しいと感じるのか」は重要な要素だと考えています。

森川さん:
美味しさの基準は、普遍的なようでいて、ある意味、個人のこだわりと言うか。そのこだわりの中で選んでもらうためには、伝えることが大事だとつくづく感じます。我々のような零細企業が、日本で売っていくにしても、海外にしても、そこをしっかりやっていかないと、商品を手に取ってもらえないと思うんですよ。

薮本:
私も今、とあるワイナリーさんの支援をさせてもらっているんです。「どうして作ってるんですか?」という問いに対する答えはまだ言語化されていませんが、きっとその土地にある本質的な価値があると思うんです。
ただ、地元から出て都市で売ることになったとき、BtoBの世界で何が起こるかと言うと、「100本買うから1,000円でよろしく!」ってなるんですよ。1度1,000円で売ってしまうと、それ以上の価値にならなくなる可能性があるので、すごくもったいないなと思うんです。

中途半端に都市向けに大量生産、大量販売ではなく、いきなり全世界に輸出する方が、時間がかかるでしょうけど、そういう売り方をした方が良いのではと感じているところです。

3.株式会社モリカワのこれから

薮本:
モリカワさんの志というか、10~20年後のビジョンはあられたりするんですか?
どういう未来を描かれているのでしょうか。

森川さん:
1つは、嗜好品としてのお茶の世界がありますから、こだわりのあるお客様をどう取り込んでいくかというあたりですね。
お茶は我々の祖業で良い商材だと思っていますが、日常的に茶葉からお茶を飲むということが、本当になくなってきています。水で食事をするという方もいるくらいです。日常飲料としてのお茶は、スーパーの棚に並ぶ大量生産のお茶。この世界は、我々のようにボチボチお茶をやってるようなものにとっては、全く闘う場ではないんです。
そういう意味でも、今扱わせてもらっている川添茶などは、どのように情報を届け、売っていくかを考えていきたいですね。これからお茶を育てるという若い方も出てきていますからね。

もう1つは、お土産、観光にのった商品づくりです。
とは言うものの、お茶そのものの現状を考えると、なかなか伸びにくいと思っています。

一方で、コーヒーについては、今まで長いことやってきた焙煎の技術がありますから、モリカワとしての味づくり、モリカワとしての原料選びを続けていきたいですね。ここをしっかりとやっていけば、企業経営のベースは作れます。地元のものを扱える力にもなります。

薮本:
地元の生産者を選定するときには、どういう思想性で選ばれているのですか?この人いいなと思うことはどういうところですか?

森川さん:
川添茶でやっていこうと思ったのは、リーダーのお茶に対する一生懸命さです。愛着を持っているし、自信も持っているし、安売りしない、それでいて貪欲なところもある。パートナーとしてやっていくには、そういう人でないと、と思いますね。
お客様に選んでもらうためには、こだわってできた商品だと伝えられるもの、そういうものを作れる人でないと良いものにはならないと思うんですよ。悲しいかなそういうものは、なかなか量がとれないので、商売人としてそこを上手いことやっていかなければ、将来的にモリカワは生き残れないと思っています。
今まで卸し業を汗水流してやってきましたけど、これからはそれだけでは通用しないですよね。

薮本:
地域に、競合相手とかおられますか?

森川さん:
業務店主体でスーパーなどに食品を卸す、そういう意味で言えば、おかげさまで、この地域のシェアはほとんど取らせてもらっています。

コーヒーに関して言えば、その地域の卸業者のトップになってます。うちもしかり、和歌山市では和歌山の卸業者が、串本あたりは串本の卸業者が頑張ってます。大手のメーカーがシェアのトップではなく、いろんな闘いの中で地元が頑張ってやってきています。

薮本:
都市からプレーヤーが来るわけですもんね。すばらしいですね~。

森川さん:
しかし、将来的には簡単にはいかないと思っています。だからこそ、地域に貢献できるような商いをさせてもらうために、どうあるべきかというところですね。

4.世界から見た日本

薮本:
今、アジア諸国には大手のモールなどができていて、その地域に劇的な影響を与えています。
基本的に僕は、田舎はそのままでいいと思っていて、田舎の1~3%のプレーヤーが全世界向けの輸出をすることができれば、おそらくその地域は維持発展できるのではないかと思うんです。

「なぜお茶を作るのか」「なぜ日本人がコーヒーを飲むのか」そこを突き詰めれば、きっと普遍的なものがあるような気がするんですよね。ここは、私ももっと勉強しなければいけないんですけど。

森川さん:
日本の中で商売をやってきて、結局、日本しか見てないわけですよ。そういう意味でも、グローバルに活躍されている方の話しを聞かせてもらうのはためになります。全てではないんでしょうけども、「日本製というだけで売れると思うのは、大きな間違いだ」と以前も誰かに言われました。

薮本:
そうなんですよね。
海外で法律事務所をやっていて感じることは、日本人はクラフトマンシップがとても強いんです。能力や技術、品質が行き過ぎると、合理的で効率的なんですけど、とても批判的で否定的で分断思考になる気がしています。
カンボジア人は非合理的なところはあるんですけど、人の話を共感的に聞いたり、主体的であったり、自分というもの、価値観があるというか、思想性とまでは、いっていないかもしれないですけど、そういうものを持っているんです。思想、哲学、美意識といったものを提供すると求心力が生まれる気がします。技術を突き詰めて突き抜けてしまえば圧勝する可能性があるのですが、そうでなければ、ただの価格競争に飛び込むことになります。

その意味では、法律事務所は、世界平和のために存在していると思っていたのですが、現在社会では残念ながらそうなっていなくて、そこに違和感を感じています。弁護士は、どちらかというと、イデオロギーとか思想性を嫌うので、法律事務所において「世界平和」っていう価値感が、我々の事務所の差別化につながっているのだと思います。

思想とか哲学というのが、ビジネスにも直結していて、この源泉は、自分のおへそのところにあるような気がしています。

5.おもてなしの文化はアート?

薮本:
振り出しに戻ってしまいますけど、なんでお茶って飲むんでしょうか。のどの渇きを潤すということなら、水でもいいわけですもんね。

森川さん:
温かいもの。急須に入れて、手間をかけて、ホッとする。コーヒーもそういうところあるかな。

薮本:
「香りと味のもてなしクリエイト」というキャッチコピー、これはいつできた言葉なんですか?モリカワさんの思想性や志が、ここに集約されているような気がします。

森川さん:
30年ほど前ですね。扱うものはお茶やコーヒーですが、ただのお茶やコーヒーではなく、「想像力」をはたらかせて「創造」していくという2つを思いを「クリエイト」という言葉に託しています。

薮本:
「おもてなし」って日本の文化にもよく出てくるんですけど、どういうことなんでしょう?

森川さん:
お話していると、何気なくしてることにこそ意味がある、ということを考えさせられますね。笑

お客さんに買っていただく、選んでいただく、おもしろいと思ってもらえるものは、それぞれのライフスタイルの中にどう「もの」がおさまっていくかですね。
貧乏なときは、腹を満たす、喉を潤すということでよかったのが、今の時代は違いますからね。自分なりの答えを出してお客様にきちんと伝えるということ、それを積み重ねていくことが、本当の意味でのブランドになっていくんだろうなと思いますね。

薮本:
まさにそうだと思うんです。例えば、私の大好きな国の一つ、スリランカは、どこに行っても、必ずその会社の一番良い食器でミルクティを出してくれるんです。日本とスリランカの文化はそれほど違いはないと思うんです。「おもてなし」は別に日本独自の文化でもなんでもなくて、世界どこでもあるんだと思います。その中で「日本のお茶」と「おもてなし」の独自性やエッセンスが何かということが、私は知りたいです!!

6.地域の良さを世界へ

森川さん:
今日の話は、上村さんにも話をしてみよう思っています。どういう反応を示すのか興味深いですね。そういう話もできる人なんですよ。

薮本:
農家さんとのやり取りって、どういう感じなんですか?「こういうものを作ってください」ということなんですか?

森川さん:
いや、私が決めるところではなく「こういうものを作ってます」という、農家さんから出てくるところです。自分で勉強してきたこだわりの中で、非常に丁寧にやっておられます。

薮本:
卸業者として、現状はどうですか?

森川さん:
全国展開しているチェーン店が増えることによって、もともとある地域のレストラン、居酒屋、喫茶店というところは、どうしても商売が衰退してきているので、厳しくなってはきていますね。
観光系のところを見ても、白浜中心に観光客は維持されているとのことですが、インバウンドが増えての維持ですからね。国内は、人口減少もありますからそんなに簡単なことではないと思っています。
ただ、今日はとても良い刺激をもらいました。

薮本:
こちらこそ大変勉強になりました。
99%はローカルの事象でいいと思っているんですよ。今回の企画も、「グローバリゼーションとローカリゼーションは一緒ではないか」「籠る牟婁、ひらく紀南はイコールじゃないのか」という問い立てなんです。ものや商品を変える必要は全くないと思っています。

本日は、随分長くなってしまって申し訳ないです。ありがとうございました。


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