コラム ディレクターズ コラム

  • < I > – 流れていくもの –

    < I > – 流れていくもの –

    河野愛 / 堀井ヒロツグ 展覧会 「< I > opportunity」について、紀南アートウィーク藪本雄登のコンセプト・ノートと解説を公開します。南紀白浜は、自然に恵まれ、魅力的な資源を多く有する観光地だ。白砂のビーチでは、熱帯魚と一緒に泳ぐことも可能で、沖合いに流れる黒潮の影響により、一年を通じ温暖な気候で知られている。また、万葉の時代から湯治場として知られており、多くの温泉宿や日帰り入浴施設が点在するヒトが集まる場所だ。南紀白浜の古賀浦(こがうら)と呼ばれる外海と内海を

  • みかん民主主義 -コレクティヴって何?-

    みかん民主主義 -コレクティヴって何?-

    1みかんは、コレクティヴか現代のアート実践では、美術史家クレア・ビショップが述べる「社会的転回(social turn)」が一定の影響力を保持し続けている。社会的転回とは、現代アートの実践において、「美的」価値から「社会的」価値への移行が進んでいる状態を意味する[1]。つまり、作品の態様や新規性より、社会や政治に対する現実的な貢献や影響を重視する潮流のことである。和歌山県紀南地域のコミュニティも、その他の地域同様、市町村合併、過疎化、インターネット社会の進展等の複合的な要因に

  • みかんコレクティヴ:内なるみかん ひらくオレンジ

    みかんコレクティヴ:内なるみかん ひらくオレンジ

    2022年2月16日「みかんコレクティヴ(Orange Collective)」とは、みかんを中心としたコレクティヴです。紀南アートウィーク2024に向けて、紀南地域や全世界から生命力豊かな仲間を増やしていくための実践です。1和歌山県/紀南と橘を巡って和歌山県では、橘本神社(きつもとじんじゃ)が日本における原初の柑橘類である橘(たちばな)やみかんを祀る神社として有名です。常世の国から橘を持ち帰った田道間守(たじまもり)神話をはじめとして、橘は、日本書記、古事記の国産神話(イザ

  • 分解の哲学 -発酵と食を巡って-

    分解の哲学 -発酵と食を巡って-

    分解の哲学-発酵と食を巡って-紀南アートウィーク実行委員長藪本雄登1「生産すること」と「分解すること」――「『生産』力の向上」――今の時代は、『生産』力ばかりに目が向けられている。「分解(decomposition)」の作用が軽視されている世界だ。故郷・和歌山県紀南で、めっきり数が減ってしまった漁師と話す機会があった。養殖技術の発展もあり、『生産』量が増えすぎたことによる歪みを感じられずにはいられない。日本における長きに渡るデフレーションの原因の一つは、実は、『生産』システム

  • ストリートの思想  – 文化創出と熊野古道 –

    ストリートの思想 – 文化創出と熊野古道 –

    8月28日開催のオンライン・トークセッション『紀南ケミストリー・セッション vol.3』に先がけ、実行委員長・藪本が見た熊野古『道』の奥行き。とても大きなテーマで、縦横無尽なトークセッションになりそうな今回。その導入に、ぜひご一読ください。.ストリートの思想-文化創出と熊野古道-紀南アートウィーク実行委員長藪本雄登1はじめに一体、『道(ストリート)』とは何なのだろうか?物理的な「道」路はもちろん、行政区画としての「道(北海道)」、哲学としての「道」教や人「道」、武芸として柔「

  • なぜ「紀南アートウィーク -ひらく紀南 籠もる牟婁- 」か

    なぜ「紀南アートウィーク -ひらく紀南 籠もる牟婁- 」か

    私は、和歌山県南紀白浜出身であり、約15年前に南紀白浜から飛び出し、カンボジアで事業を始めました。現在、世界各地で法律事務所を展開していますが、ときに喜び・ときに苦しみながら多くの企業の支援をさせて頂いております。その過程で「グローバリティ」と「ローカリティ」とは何か、その関係はどうあるべきだろうか、と悩むことが多くありました。「全世界で通用する新しい価値を生み出さなければ生き残れない」という強い危機感から、全く異なる場所に楔を打とうと、法律の世界からアートの世界に飛び込んで